第2話 嘘
「え?」
これはどう言うことだ? 俺は突如買取所に現れた男の話を聞くと言われたからついていったんだぞ? それなのに何故、この俺が牢屋に入れられているんだ?
「ちょ、ちょっとこれはどう言う事だ! 話と違うじゃないか!」
俺は牢屋の檻を掴み、外にいる看守へと訴えかけた。しかし、その返答はあまりにも無慈悲なものだった。
「あぁん? うるせーな。ここに入れられる奴は大抵ヤバい奴か、そのヤバい奴に巻き込まれた奴なんだよ。もし巻き込まれた側なら安心しな」
「へ?」
ふぅ、良かった。流石に冤罪だよな、すぐに釈放されるよな。ってか話聞かれるだけだろうし。
「どうせ翌日にはお前、死んでるから」
「っ……!?」
俺は呆然とした。自分の身に何が起こっているのかが一切分からなかった。いや、正確には分かっていても、理解していても、これが現実だと認めたくなかった。
何故、何故、平穏を乱された被害者である俺がこんな仕打ちを受けなければならないのだろうか。あの男のせいで、アイツの所為で……!
❇︎
「おいっおい! どうした、さっさと答えろ!」
「へ?」
こ、これはどう言う事だ? 俺は今しがた正直に答えて牢屋に入れられたんじゃなかったのか?
『な、言っただろ? 死ぬって。今のは俺様の力で時を戻してやったが、次は無い。善人として死ぬか、罪人として生きるか今この瞬間で選ぶんだな」
なっ、俺は、俺はお前が来たせいでこんな目に遭ったんだぞ!? それをよくもいけしゃあしゃあと!
『おいおい、頭を冷やして冷静になって考えてみてくれ。そもそも俺はアイツらに追われている被害者だが、そんなことを抜きにしても、何の罪もないお前を何の理由も聞かず、牢屋にぶち込んだのは誰だ? 俺か? 違うだろ? 俺が事の発端になったのは事実かも知れないが、本当に悪いのはどっちかよーく考えてみてくれ。多分、猿でも分かるだろ?』
そ、それはそうだが。相手は王様直属の騎士なんだぞ? 嘘吐いてそれがバレたりしたら……
『じゃあ潔く死ぬんだな。俺の力を当てにしようとすんなよ? 今よりもっと時を戻せとか無理だからな。さっきお前を救ったので力はもう使い切った。次の発言はよく考えて答える事だな』
お、俺はどうすれば……で、でも、先程俺自身の身に起きたことは疑いようのない現実。そしてそこで俺は確かに殺されかけた。
「おい! それで男は来たのか、来てないのか、どっちなんだ!?」
「す、すみません。仕事で疲れていたようでして……そのー、男と言いましても、営業時間内に素材を売りに来た冒険者のことですか? それ以降は職員が出て行くばかりで誰も入っては来ませんでしたよ? 素材を売りにきた冒険者でしたら、照会すれば身元を特定できると思いますが」
「ふむ、そうか……いや大丈夫だ。協力感謝する」
そう言って騎士団たちは帰っていった。
私はその日、人生で初めて嘘を吐いた。
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