第12話 職員流攻略法


 この試験には攻略法がある。


 そしてそれはギルド職員として試験の裏側を知っている俺にしか分からないことだ。


 そもそもこの試験には落とし穴が存在する。それは説明時にモンスターを狩れ、そして討伐証明部位を持って来い、そうしたらポイントが入る、としか説明されていない点だ。


 つまり、何ポイント取ればいいのか、そもそもこの試験において合格者は何人出るのか、そして試験はこれだけなのか、など説明されていない点が多く存在しているということだ。


 それを踏まえた上でこの試験にどう向き合うかも試験内容なのだろうが、俺は元ギルド職員、そして現罪人だ。……いや、罪を犯した自覚はないけどな。


 何が言いたいかというと、なりふりなんて構っていられないってことだ。そしてまず間違いなく試験はこれで終わりじゃない。ってか絶対に二次試験は存在する、だって俺も運営してたし、目の前で絶望してる冒険者候補を何人も見てきた。


 次に進める人数は多くて十人、少なければ片手に収まるとこだろうな。


 そして俺が知っている裏情報はこれだけに留まらない。具体的な攻略法はこれからだ。


 俺が運営した時と同じ仕様であるなら、この試験の序盤に出てくるモンスターのポイントは低めに設定されている。そして、高ポイントのモンスターは試験の時間がある程度過ぎて人気のいないところに配置されるのだ。


『……おい。さっきからずっと一人語りしてるけど、それはあくまでお前んとこのギルドの情報だろ? それを過信し過ぎていいのか? 全く違ったらどうすんだ?』


「その時はその時だろ。堕天使パワーでどうにかなんねーのか? ってか、俺が死んだらお前も死ぬんだからある程度は、いや積極的に協力してもらうからな?」


『気が向いたらなー』


 なんだその腑抜けた返事は。お前のせいで俺はこんな目に遭ってるんだからもっと加害者意識を持って欲しいものだ。


 ん、ちょっと待てよ……


「『来た!」』


 他の参加者の動向を見て人気の無い所で待ち伏せていたところ、遂にドスン、ドスン、とポイントが高そうな足音のするモンスターが現れた。


 俺はそーっとこちらの存在がバレないように顔を出し覗き見ると、そこにはドラゴンがいた。


「は?」


 そのドラゴンはなんとか森の中に収まってはいるものの、その体高は俺の何十倍もあり、それに加えて大きな爪と翼、そして牙を持ち合わせていた。


 真っ赤な表皮は見るからに堅そうで、人間の攻撃などもろともしないのだろうと思わせてくる。


「……これ、無理じゃね?」


 おいルシファーあのドラゴンも天底で倒せるか?


『は、何言ってんだ。無理に決まってるだろ』


 で、ですよねー……


「グルルルルロォグガァアアアアア!!」


 眼前のレッドドラゴンが咆哮した。その目線の先には明らかに俺がいた。


 あ、これガチで詰んだかも。第二回目の人生早速終了のお知らせかも。

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