第11話 試験開始


「冒険者、実技試験会場はこちらでーす!」


 ふぅ、遂に来たか。とは言っても昨日の今日で全く実感がないのだが、この日が来てしまった以上、全力でやる他ない。


 それにしても、俺も試験の運営してたなー。誘導もそうだけど準備とか色々大変だったな。監視カメラの設置だったり、ルールの穴が無いか確認したり、挙げればキリがない。


『ん、だったら試験のクリア方法とかも分かるんじゃねーか?』


「な訳ないだろ。試験は毎回毎回違うんだから。それに俺が実際に試験を受けてたのは十年以上前だぞ? 座学は変わっていなくても試験はある程度難化しているが普通だろ。ってか、周りに人いるからあまり話しかけるなよ?」


『いや、心の声で会話しろよ。別に声に出さなくても分かるんだから。どこの誰に訊かれているかも分からないんだぞ? もうちょっと警戒しろよ』


 あ、そっか。すっかり忘れてた。というか、心を読まれたくないからこそ、口に出して会話してたんだろうが。まあ結局読まれるから意味ないんだけどな。


「それでは実技試験の概要を説明致します。本日の試験内容は、モンスター討伐となります。今から制限時間内にこの森に放たれているモンスターを好きなだけお狩りください。そして、それらの討伐証明部位をこちらも制限時間内に本部まで持参いただくことでポイントが入る仕組みとなっております」


 ふむふむ、そしてそのポイントが多いやつがクリアってことか。って、あれ?


『ん、どうしたんだ?』


 もしかして、これ俺が担当してた時の試験と全く一緒じゃないか!?


『おいおい、そんなことあるはず無いって自分で言ってただろうがよ』


 そ、それはそうだが、でも現にこうして起きてしまっている。もしかしたら別のギルドだから、みたいなこともあるのかな? それだとしたら超ラッキーだ。


『コレはやるしかねーな』


「あぁ!」


「試験を開始しますっ!」


 周りにいた冒険者たちが一斉に駆け出し、試験会場である森の中へと入っていった。意外と思ったよりもいるんだな、受験者。この中から何人合格者は出るのだろう。


『おい、さっさと行かなくていいのか? モンスター狩り尽くされたらどうするんだよ』


 ふっふっふ大丈夫だ。俺はこの試験を知っている、つまりは攻略法すらも知っているのだ。そしてその攻略法からすると初手に急いで動くのは悪手だ。


『ほう? それはまた何故だ』


 まあ、見てれば分かる。そろそろ頃合いだな、行くぞ。俺は冒険者たちが向かった方向とは別方向に向けて走り出した。


『ふむ、そういうことか』


 流石に堕天使、俺の考えていることがもう分かったようだ。


 ……いや、俺の心を読んだだけか。まあいい、敵は他の冒険者だ。俺はこの試験絶対にクリアしてみせる!

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