第16話 死握
やべ、確実に詰んだ。ってか誰だよコイツら人の部屋に勝手に入ってきやがって。まあ、宿だから正確には俺の所有物でもないんだけどさ。
『なぁ、コイツらって絶対にヤバいよな?』
『あぁ、ヤバいぞ』
『死ぬよな?』
『あぁ、死ぬな。百パー』
どうしよ、ってかどうしようもないのか。確実に死ぬんだから。ならばもういっそのこと全て諦めて死んでしまおうか。今すぐ死にたいとは思わないが、別にこうなったらもう死んでもいいと思ってしまってる。だって何もしなくても死んだもん。
ならばそれを受け入れたほうが安らかに死ねるってもんだ。
『なあ、天使にも地獄ってあるのか?』
『おいおい、何馬鹿なこと言ってそんなの……』
死ぬ間際にそんな軽口を叩いたその時、ドアから再びノックの音が聞こえてきた。びっくりしすぎて心臓が飛び出るかと思ったが、誰だ? 更なる追加の人員か? ならば安心して欲しい。俺はもう死ぬ気満々だ。
「お客様がお見えになっております。お通ししてもよろしいでしょうか?」
扉の向こうにいる女性はそう言った。
当然、命を握られている俺には選択及び発言の権利は与えられていないため、侵入者に伺いを立てる目線を送った。
二人は声も出さずに目配せをすると、小声で、
「今日の所は見逃してやる。今すぐ殺したら多少なりとも事件になるからな。揉み消すにしても相手が相手だ。不審感を持たれるわけにはいかない。おっと、喋りすぎたようだな」
そう言って二人は闇夜に消えていった。ん、なんだったんだ? 相手も相手? 一体どういう事だ? ってか追加の人員じゃなかったのか? 助かった?
「お客様〜?」
疑問符ばかり並べまくっていると、とうとう仲居さんからも投げかけられてしまった。
「あ、はい。お願いします!」
俺がそういうと、扉から現れたのは一人の背の低い髭の生えたおじさんだった。いや、間違いなくこの人が俺の命を救ってくれたのは間違い無いんだけど……ちゃんとおじさんだよな。
「あ、あのーどちら様でしょうか?」
「うむ、儂はお主がさっきまで試験を受けていたギルドのギルドマスターじゃ」
「は? ギルドマスター!?」
「声が大きいぞい。お主は命を狙われておるのじゃろう? もう少し言動には注意したほうが良いじゃろうな」
「え?」
ちょっと待ってこのジジイ、俺のことについてどこまで知ってんの? ってか俺に何の用??
「そ、それでギルドマスター様がこんな私に何のようなんでしょう? もしかしてさっきの試験に何か問題でもありました?」
「単刀直入に言おう。お主、ギルド直属の冒険者にならぬか?」
堕ちた職員 magnet @magnetn
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