帰蝶と信長の絆、そして巨大な敵に立ち向かう

濃姫、別の名を帰蝶。
言わずと知れた織田信長の正室となった女性ですが、濃姫という女性に対する最初のイメージはなんでしょうか?

斎藤道三の娘、つまり蝮の娘。妖艶な美女。あの信長の正室として渡り合うには気の強いしたたかな女性だったとか。彼女と信長の間に子がいなかったことから二人は不仲だっただとか。彼女の関する史実があまり残されていないのは後に離縁、もしくは死別したためだとか。

様々な推測がされる濃姫ですが、この作品の帰蝶という女性は実に強く美しく、また時に優しく母性に溢れた女性として描かれています。特筆すべきは信長との関係。政略婚として信長の正室となった帰蝶、しかし己の分をしっかりと弁えていますし、しっかりと信長に寄り添っています。作中の二人の仲の良さにはつい頬が緩んでしまうこともしばしば、それからとある食べ物が無性に食べたくなります。

帰蝶と信長。
二人の周囲を固める人物はたくさんいますが、二人が生きる時代は戦国時代。出会いと別れを繰り返すたびに苦しみ絶望し、しかしその度に二人の絆も同じくらいに強まっていきます。

さて、本作品のラスボスとも言える人物は今川義元なのですが、かの御方の存在がなんとまあ強大なこと。史実は誰もが知っている通りとはいえ、この今川義元に本当に勝てるのか?何度となくそう思わされます。

本格的な歴史好きの方はもちろんのこと、あまり普段は歴史小説に触れない方もしっかり楽しめる作品です。タイトルにある通り桶狭間が最大のクライマックスと思われますが、帰蝶と信長の人生をもっともっと長く見ていたいと思うくらいに魅力に溢れる作品です。




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