2-2 呪われのすゝめ
────~~ッッ!!、!?、
瞬間、顔が音を立てて歪んだのが分かった。
合わせ鏡に映った己の背中、そこに彫られて居たのは想像通りの火傷痕なんかでは無い。
戸惑いを隠せず意味も無しに鏡を左右に振ってみるが、やはり何度見たところで
ソレが剥がれることは無かった。つねる頬に走る痛みが、消え失せるような事は、ついに無かったのだった。
先ほどのギャグな世界から一転、十二分に俺の表情が凍り付いたのを見届けると、ヒルメは鏡を床に、服の裾を腰に
そしておもむろに付けヒゲと
「うぉっほん! さてコウヤ君、アナタは先程 "バッチリ死んでる" や "病院よりこちらが云々" との発言をしていましたが……その解釈は ほぼ正解です!おめでとうございます!」
そう言って額にクソダサいニコちゃんシールを貼り付けて来たヒルメ。即座にそれを剥がした俺を、気に留める事なく話を続ける。
「具体的な描写はグロっちぃので避けますが、実は私が昼過ぎにアナタを発見した時、既にアナタは人としての原型がもう殆ど残っていなかったんです。それこそ潰れたトマトみたいに」
「まぁ、あんだけ高いトコからノーガードで落ちればそりゃぁな……」
「えぇ、私も最初は手を合わせる事を覚悟しました。しかし奇跡というのはあるものでして! 何とアナタ………目も顔も四肢もバラバラになってたというのに生きてたんですよ!!」
「おおマジでか!! 神サマもたまには信じてみるもんだな──って待って待て待てウェイウェイ wait。今バラバラって言った?、ゼリーって言ったよね?、ちょ、待てよ。冗談……え、……そういうコト!?」
「この子は助かる……確信した私は急いで──
「待てコラ無視すんじゃ……せめてこっち向いて話して下さい先生!」
スカート?を引っ張り訴えかける俺の口に、スッと人差し指を
彼女は
「
「いや、そんなノリノリで薄ら笑い浮かべながら メガネクイッ! されても困るわ……大魔導士 ヒルメ? 聞いたこと無ぇよ、」
「んなっ!──ま、まぁいいでせう。有名すぎても困りますからね……気を取り直して、
(イッてぇ……)
突然大声で叫んだ
そう、つまりそういう事だ。あの神秘的な遭遇から、まだ 1 時間と経っていないというのに……認めたくないものだな、
「この
「おお~? お、おお! 成る程……イキナリ大魔道士だの言いだした時はいよいよと思ったが、凄ェんだなアンタ!」
「えゝそうでしょう! そうでしょうとも! このヒルメ様に出来ない事なんて、この世に在ったらダメなんですよ!!」
凄まじい速度で投下される new な情報を、OL がまとめ買いしたダイエット食品並みにしか処理出来ていない俺からのテキトー極まりない賞賛。
しかし彼女はつけヒゲを弄りながら "エッヘン!" と、まるで自転車に乗れた事を褒められた子供のように満点のドヤ顔をキメた。
威圧感すらあるその美貌に 1 ミリもマッチしないその光景は、ひどく面白くて、何だか安心できて。
気が付けば「なんだよ、それ」と呟きながら、自分がグシャグシャになったことなどとうに忘れて、クシャッと下手くそな笑みを浮かべていた。
「さて──!」
しばらくの間 俺につられ笑っていたヒルメは、突如 [パンッ!]と両手を鳴らし、付け髭とメガネをガラクタに埋もれていた机へと投げ捨てる。
「種明かしも出来たことですし、そろそろ行きますよ、コウヤ」
「ど、何処に?……」
「ご飯ですよご飯!
グッと立ち上がりキュッと揺れた、身体と声を弾ませて。首を
「あっ、そうだっ──タっぁ!」
怖いぐらいの美女に手を握られながらミニスカで走るという、奇妙な抵抗と背徳に頬を染めて背中を押されて。
俺は屈辱で塗り潰されていた記憶を裏声に包んでは、さっきの眼鏡よろしくその場に放り捨てて、彼女の跡を追った。
所構わずごった返す違文化に、禁忌や倫理スレスレの
クソゲー RPG のオープニング並に次々と襲い掛かって来た "未知" に圧倒され、クマムシを殺せる勢いでヒヤヒヤだった内心。
しかしそんな形 持たぬ幻想なんてモノ、彼女の放った明るい声と、やがて香ってきた山菜の芳醇さの手に掛かれば、簡単にかき消されていった。
なんてったってこの時、
向かう台所の先、何が起きているか。
なんて……
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ここまで読んでくれてありがとうございます。
面白い!、ガンバレと思ってくれた方へ。
☆や♡ レビューに感想、何でも大歓迎です!
皆様の一秒で、本作は一日トレンドに乗ります。一月は走ります。一年は続きます。
他力本願で情けない限りですが、本気で書籍化アニメ化目指してます。何卒、応援よろしくお願い致します m(_ _)m
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