2-1-2
次の愛想笑いを作るため再び表情筋をこねようとした時、いかにして先程の
いや、
……何ウジウジとしてんだよ、俺は。
「あ─~~っ、止めだヤメ、面倒臭ェ!!」
パンッ! と思いっきり両頬を引っぱたいて、心の中でズルズルと
ア──っ! と思いっきり大声でがなり飛ばして、喉の奥でモジモジと汚く逃げ散らかしていた
そしてイキナリ発狂した目の前の患者に驚く彼女に向かって、今更ながら、ようやく──……"演技" ではない、
"会話" の為、ボールを放った。
「悪かったな……アンタ、さっきからボソボソとホコリみてーな返事ばっかしちまって。寝ぼけてたわ」
「ん!?、イキナリ壊れたと思ったら真面目ちゃんモードお終いですか? 早かったですね」
「真面目っつーか、ありゃただのコミュ障モードだし……」
「まぁ、確かに……?」と首を捻りながらも納得している彼女に、俺は軽く苦味の無い笑みを浮かべながら、すっと手を伸ばす。
そして──
「え~
「ヒルメです! どういたしましてです、コウヤ!」
勢いそのままに来たせいで、続きを知らずまごついた
「あ、あぁ! よろしく頼むぜヒ──
……手ェ細っそ、柔らかッ! え、マジで大丈夫なのかコレ?、いや握手求めたのコッチなんだけどさ、割れたりしねーよな!?、あ、ヤバい緊張で手汗が……
「どうしました?、手に何か付いてます?」
「ヒ→エッッ↑ヘョイ!! 何もナイ何でもねぇ何でもないだす!! 」
あれだけ決意だのなんだのと
「ひえ?ヒョイ? ……まぁ、何も無いなら良いとして。どうですかコウヤ、せっかく元気も出て来たんですし、ご飯にしませんか?」
「ご飯──って、良いのか?」
「モチロンですよ! 身体が弱った時は、いっぱい食べていっぱい寝るのが一番なんです! それに、私もいい加減ボッチ飯には飽きましたし」
「じ、じゃあ、お言葉に甘えて……」
お母さんみたいだなアンタ、とツッコもうとしたが、よく考えたら自分が母親を知らない事を思い出し口を留める。
彼女……いやヒルメはその返事を受け取ると、恐らく台所に繋がっているであろう廊下へと跳ねて行った。
「……そろそろ俺も起きねーとな、」
足音の
もそもそと音を立てながら、毛布的な何かから、遂に俺は這い出──[ベチッ、]
「ベチ、?……」
普段ベッドでは絶対に聞かない音に、動作が固まる。口だけが続く。
包まれていた下半身より、恐怖がジワジワと音を立てて
反射で布を引っぺがすと、飛び出した鼻をつく甘ったるい臭いが立ち込めて。気が付けば全身の毛穴が我先にと口を開き、そこら中で冷や汗と脂汗を嘔吐した。
夢の
そうだ、俺は、この歳になって──
「……ハっ、……ハ?っ、……ハハ、
?る??、へ、へへへへ……」
髪の毛を 2、3 度、握り締めながら。
開き切って割れた
受け入れ難い現実に、唇や指先では残像を刻むような
一筋すぅっと頬に冷気が走ったら、そのままどっと溢れ出した。
「あ~、ハっ、キャハハ!、へ、っハッハっ……ア"ッハハハ!!……ぉ"え、ヒッ」
底が外れた目を覆いながら、とうとう完全に気がフレて、裏声混じりの大声で
「──ッ何事ですか!?」
ドタドタと足音。慌てた叫び声。揺すられる肩。 ……ブツ切りの情報だけを頼りに、横に彼女が、ヒルメが飛び込んで来た事を悟った。
「……ժ ̀ゎ」
「え!? 何ですか!? 皮?」
「、なわ、だよ……縄、丈夫な。ヒト 1 人吊るせるくらいの……」
「イキナリ何を言って────あ"、」
眉をひそめた彼女の口が、ギロを鳴らして閉じ方を忘れる。
(……シテ……コロ、テ……)
最後に毛布を完全に
俺はいつまでも、いつまでも心の中で、ボソボソと叫んでいた。
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