第2話 全ての元凶
物置部屋に入ってから二十分たった。
お嬢様を膝に乗せたまま、僕に資料にサインを入れていく。右手は頭の上のまま。
なんで生徒会関連の仕事をここでやらされているんだろう?―――この資料、資金の計算が間違ってる。
資料をまるめてゴミ箱に投げ込む。資料の山がやっとなくなってきた。
膝の上に乗せたお嬢様はすぐに寝てしまって…今も寝ている。
右手をお嬢様の頭から離す。
なんで寝れるのだろう?普通危機感を感じないのだろうか――辞めた。考えるのは
今に始まった事じゃない。
視界の隅でエルミヤさんが笑みを溢しているけど、何かあったのだろうか?不満そうに見えるのは僕だけなのだろうか。
そんな事を思いながら資料をかたずけているといきなりドアが開いた。
「おはよう、皆は集まっているかねミノリ君?」
...聞きなれた声、そして全ての元凶。
この人に目をつけられなければ今頃家で僕は――飛びっきりの笑顔を作り返答する。
「おはようございますの時間ではないですよ、学院長」
学院長。学園にいた時に目を付けられてから以降何度も罠にはめられた。彼からしたら僕はおもちやのように見てる気がする。
学院の時も変に目立っていたし……
しかし、受験の時に試験場をめちゃくちゃにしたのは僕のせいじゃなくて――首筋に鋭い痛み。
「噛まないで貰えるかな?君のように体が強い訳じゃないから」
いつの間にか起きていたお嬢様に甘噛されていた。
『失礼なこと考えていたから』――なんでばれたんだ。
「アッハッハ!相変わらずの仲の良さだよ君たち。まるで恋人みたいだねぇ。」
魔道具を手に持ちながら言う学院長。
「変な事言わないで下さいよ。第一そんな関係じゃないですから」
「そうには見えないけどねぇ?エミリアさんはどう思うかい?」
「ミノリ君、私にも紅茶をくれないかな?
少し休憩しようと思ったの」
「わかった。東産の物でいいかな?」
「宜しくお願いします」
この時、学院長が悲しそうな顔をしていた。
膝に乗せたままのお嬢様をおろし紅茶を作り始める。この際彼女から飛んでくる不満を無視する。
「あ、ミノリ君。私のも頼む、私もここ最近忙し過ぎてゆっくりしてる暇がなかったからね。学生が羨ましいよ」
「変な事言わないで下さいよ。まだ23歳でしょう。更にこの資料、学院長が自らやらないといけない事じゃないですか」
生徒会の要求資料もこいつがサインをいれないといけないのに...言葉が悪くなってしまった。
「そのために私の権利を君に渡したじゃないか?」
当たり前のように言わないで欲しい。
「この権利もあなたに騙されて渡された物ですけどね。」
言ってもどこか知らぬ顔。いつか絶対やり返す。学院長が小声で何か喋ってるが全く聞聞こえない。
(賢いやつは偉くなって貰わないと...偉くなった後は……フフ)
独り言してるのにいきなり笑っているしで端から見たら危ない人に見える。
だから何だろう。飛んできた炎の塊にきずかないのは。
視界の端でお嬢様が魔法を唱えていたのは見ていていたが、慈悲はない。実際見てないのが悪い。
「...私とミノリの時間を奪うなら容赦しない、
「だからっていきなり魔法を撃つのは?いちよう、ここで一番偉い人だよ?」
アフロになった学院長がら現れる。若干焦げ臭い。
「...関係ない。邪魔するやつは全員燃やす」
話の内容、聞こえていたのか...地獄耳を持つ幻剣様――『名前で呼んで!』はいはい。
「だったら塊を飛ばすのは辞めてくれないかい?前まではわざわざ魔力を隠しながら唱えるなんてしなかったじゃないか。」
ねぇフェリアお嬢様?
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