第6話 ひと狩り行こうぜ!

アルミラージが住み着いたという洞窟どうくつは、クスコの街から南東に歩いて半日もしない場所に位置してる。


道中に大した危険はないようだが、野生動物は生息せいそくしている。

運が悪ければ熊や狼と遭遇そうぐうすることだってある。


馬の脚ならば、3時間くらいで目的地に着いたはずだが、ケイレブかライリーの後ろに乗る気にはなれなかった。


ということで一行は馬を引きつつ3人で歩くというなんとも移動方法を選んだのだった。


途中、何度かケイレブもライリーも馬に乗ることを進めてきたが

「今はそんな気分じゃない」の一点張いってんばりで二人乗りを回避した。


当然と言えば当然だが、辺りはすっかり暗くなっていた。3人は、道中の平原で野営をすることを決めた。


「このまま進むと、朝方には洞窟についてしまう」


とライリーが難しい顔をしながら地図を手にしていた。


朝から角兎つのうさぎをぶっ殺すなんて、壮快そうかいだし早く終わらせることに越したことはないじゃないかと首を傾げているリリーを見て


「アルミラージは薄暮性はくぼせいなんだ。朝と夕方が最も活動している時間だからそこはけたほうがいい。」


とライリーが説明をしだした。

ちゃんと周りを見てはなしてるなぁと感心した。一方のケイレブはあくびをしていた。こっちはなんも考えてないなぁとあきれ返った。


「寝込みを襲うとかダメなの?」

「いや、夜も活動していることが多いし、動きが鈍っている昼間が一番狙い目だと思うよ。」


うさぎごときに・・・とは思ったが、兎は兎でも相手は魔獣まじゅうなのだから用心に越したことはないと自分を納得させた。

ライリーは、地図を折りたたみ雑嚢ざつのうにしまうとリリーを見ながら口を開いた。


「リーセさんは、魔獣を狩ったことある?」

「あ、それ俺も気になる!」とケイレブも話に乗ってきた。


一瞬リリーの脳裏に人狼じんろうの姿が浮かぶ。


「まぁ、それなりには」

「僕たちは、魔獣を狩ったことはないんだ。だからこそ慎重しんちょうにやろうと思ってる。リーセさんから見たらいたらない所もたくさんあるかもしれないけど、最悪の事態は避けたいんだ。」


ライリーの言葉に嘘はなかった。この男は、自分の力量を知っている。

バカは1人だけだったことが分かり、リリーは少し安心した。


「大丈夫だって!なんて言ったって俺は聖堂せいどう騎士団きしだん史上最強の剣士になる男だぜ!?」

バカがしゃべった。考えうる限り一番バカっぽい内容を大声で言い出したのだ。


「あんた聖堂騎士なの?」


もちろん嫌味だ。聖堂騎士がこんなところにいるわけはない。それに、彼らならばにすぐに気が付くであろう。


「まだ、ただの剣士さ!でもこの魔獣狩りが終わったら、領主りょうしゅから紹介状を書いてもらうんだ!」

とまぁ元気よくニコニコと話している。

横に座るライリーは、あははと苦笑いをしていた。


ずで能天気なやつと、慎重で気弱な男。意外といい組み合わせかもしれない。


まぁ背中を預けるほど信用は出来ないが・・・。

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