灰塵のデットリバルト~ひねくれエルフの冒険譚~

りふじん

プロローグ

薄暗うすぐらい明りの中、ローブ姿の老人たちが円を描くように儀式用ぎしきようの台を囲み呪文をとなえ続けていた。


台には、指輪が3つ綺麗きれいに並べられていた。

その周りに様々さまざまな色の光が集まり、グルグルと回り始めた。

光は、一つ一つ指輪の中に吸収きゅうしゅうされていく。


その間も呪文をとなえ続けられていた、老人たちの顔に疲労ひろうの色が見え始めた頃、最後の光が指輪に入っていった。


まずまずの出来だと言いたげな顔で指輪をじっくりと観察する老人。

老人が手に取った指輪は、金色こんじきの本体に赤い筋が通っている。その赤い筋からは、脈動みゃくどうを感じた。

3つの指輪をかき集め、腰につけていた皮袋かわぶくろに入れると、出口に向かい歩き出した。


 ―――突然、明かりが消えた。


それと同時に、仲間たちの悲鳴が響き渡る。指輪を持った老人は咄嗟とっさに身をかがめ、声を押し殺した。

 暗闇の中、彼は皮袋かわぶくろを握りしめながらうように出口に向かった。

出口まであと一歩というところで、仲間の悲鳴は聞こえなくなった。老人も息をひそめてその場にとどまる。

あら息遣いきづかいが聞こえる。心臓の鼓動こどうが、自身じしんの中に響いている。

あともう少しでこの地獄じごくから抜け出せると思うと、ても立ってもられなかった。


しかし、その考えは甘かった。

目の前に灰色はいいろの足が見えた。何者かにグッと身体からだが持ち上げられ、老人は悲痛ひつうな叫び声を上げた。

彼の目には、灰色はいいろの悪魔の顔が浮かび上がっていた。

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