第11話 君の名は・・・?

「リリーさん!!」


突然自分を呼ぶ声が聞こえたかと思うと、目の前の森からライリーが顔を出した。


「ライリー?」

「良かった!はぐれたかと思った・・・ケイレブが先走さきばしって洞窟に行っちゃたんだよ」


ライリーはニコニコとしている。


しかし、リリーはその場を動くことは出来なかった。


どことなく感じていた違和感いわかんの正体がわかってしまった。


「アレ?その男は・・・」

ライリーはリリーの背後にいる男に気が付くと腰に差した剣に手をかける。


「リリーさんそいつから離れて!」

「お前・・・やる気か?」


男も、短剣に手を伸ばした。


しかし、リリーは一歩引いて長身の男の後ろに隠れる。


一瞬、背後を取られたと男は思ったが、リリーの様子を見て、そうではない事を察した。


彼女はかすかにふるえていたのだ。


「ライリー?どうして?」

「え?」


「どうして、ケイレブの鎧がここにあるの?」

「熱いからって脱ぎ捨てたんだよ」


「どうして、フードを脱いでるあたしを見て驚かないの?」

がエルフだってことは、途中から気付いてたよ。ただ何か事情があるんだと思って」


「どうして、あたしの


ライリーの顔から、さっきまでの笑みが消えていった。


「あなたと、ケイレブにはって名乗ったのに、どうして、あなたはあたしをって呼べたの?」



――「アレ?僕、やっちゃった?」



ニヤッとライリーが笑った。その笑みは今まで見たこともない冷たい笑みだった。

思わず、男の腕をつかむリリー。長身の男もグッと身構みがまえる。


「ごめんね。本当はリリーさんのこと知ってたんだ。」

ライリーが一歩ずつ、近づいてくる。そのたびに長身の男とリリーは距離を取った。


魔獣まじゅうりを手伝ってといえば助けてくれるだろうなぁって思ってたんだけどね。あのバカケイレブも魔獣狩りに来るって言うから面倒な話を作る羽目ハメになっちゃったよ」


ライリーは転がっているよろいを見つめ、その前に立った。


、言ったんだ。強くなれってね。僕は強くなった。本当に強くね。」


そう言うと、ライリーは鎧をり上げた。


何キロもある鎧が、宙を舞う。


鎧からは、大量の黒い粉がこぼれ落ちた。

その粉はキラキラと光を反射している。


「最悪の事態は避けたいんだ。」


ライリーは、転がる鎧を踏みつけた。

まるで砲弾ほうだんでも受けたかのように鎧は大きくへこんだ。


「あの指輪、渡してくれるかな?」


リリーは、ギュッと首から下げている小さな皮袋かわぶくろを握る。長身の男は横目で、そのしぐさを見ていた。


「いやよ。あんたなんかに渡すもんですか」

「だとよ。さっさと消えろニヤケ野郎」


長身の男もリリーに続いて言い放った。


「じゃあ・・・仕方ないね。最悪の事態ってやつを見せてあげるよ。」


ライリーの顔から、スッと表情が消えると、身体が光を放ち始めた。

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