第12話 デットリバルト
無数の光が、ライリーの身体を包んでいる。
身体がうねり変化していく。
全身の筋肉が膨れ上がり、腕は長くなっていく。
そこのいたのは、ライリーではない何かだ。
大きく生えた長い耳、燃えるような赤い目、額には長い角が一本生えていた。
口元からは、大きな牙が2本突き出ている。
逆立った白い毛が肩から背中を覆い隠し、皮膚は黒く、鱗のような模様が隙間なく彫られている。
リリーは、立ち
おそらくこいつは、魔族だ。
あの手紙に書いてあった言葉をつぶやく。
「デットリバルト・・・」
「は?」
その言葉は、長身の男にも聞こえていた。
男は、リリーの腕を掴むと思いきり左の方へ投げ飛ばした。
「きゃぁ!!」と悲鳴を上げ、地面に倒れこむリリー。
角兎が男に向かって突進する。
胸の辺りに
体勢を崩した角兎は、肩から男にぶつかる。
男は衝撃を和らげるために後ろに飛ぶが、衝撃の方が大きく平原を転がり回った。
リリーは立ち上がると、弓を
あの男と命を懸けた我慢比べをしていた時に、
今自分が持っている武器は矢だけだった。
起き上がった角兎は、倒れこむ男と、焦っているリリーを見比べた。
あの男はしばらく動けないだろうと踏んだ角兎は、リリーの方へ向かい歩いてきた。
強き者の余裕だと言わんばかりの堂々とした
リリーは、皮袋から指輪を取り出した。
あの手紙によれば、指輪には魔力が込められている。
その力を使えば魔族を倒せるかもしれない。その可能性に賭けるしかなかった。
指輪を
警戒しているわけではない、その証拠に彼は腕を組みながら様子を見ている。
やるならやってみろと言わんばかりの堂々とした態度だった。
リリーは大きく息を吸い、手紙に書かれていた呪文を唱える。
「我に力を!デュストレイン!!」
――何も起こらなかった。
「え?」
確かにあの手紙にはそう書かれていた。
指輪を嵌めて、呪文を唱えれば力を解放できるはずだった。
角兎は、肩をすくめる。そのしぐさにライリーの面影を感じ、リリーは動揺する。
「なんでよ・・・」
リリーの悲観の表情を眺めた角兎は
彼にとって、これほどおいしい展開はなかった。
恐怖で
絶対的な力を前になす術なく、死に怯えるエルフ。
最高の瞬間だ。同時にその
角兎の背中に衝撃が伝わる。
少し揺れる程度であったが、違和感がある。
振り向くと、長身の男が角兎の背中に短剣を突き刺していた。
「ブォォォォォォォ!!!!」
角兎は痛みと怒りのあまり
リリーは、初めて男の行動に感謝していた。
やるじゃんアイツ!という思いを込めて彼の名を呼ぶ
「でくの坊!!」
「でくの坊って言うな!!」
男は短剣を持つ手に力を籠め、さらに押し込む。
「俺の名前はヴァンだ!!」
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