第一章 リリーとヴァン
第1話 酒場での出会い
リリーは、ため息をついた。
この街に来て、仕事を探し始めてもう2日が経ったのに、酒場の掲示板にはろくな仕事がなかったからだ。
「すみませーん。仕事募集ってこれだけですか?」
一か八か店員に話しかけてみたが、店員は肩をすくめ厨房に入っていった。
どうやら、このクスコという街は
「背に腹は代えられないか」
もう一度掲示板を
宿泊には、
「これ全部やって、一泊分にもならないなんて・・・」
ここは潔く薬草でも集めるかと、比較的高額で楽そうな依頼書に手を伸ばそうとした時、背後から視線を感じた。
すぐに振り向いたがテーブルで飲んだくれる男が数人いるだけで、視線の主はわからなかった。
用心に越したことはないと、赤いフードを深くかぶる。この国で自分の種族を悟られるのは良くないことだとリリーは知っているからだ。
酒場の前で、リリーは本日二度目の大きなため息をつくことになった。
目の前には、
移動中に汚れただけというのが見て取れる、にもかかわらず
「ねぇキミ、一緒に仕事しない?俺たち
などとさっきからペラペラ話している。
何が
「キミ、
「いや、興味ないので。そこどいてください」
くだらない
「つれないなぁー、俺たち結構強いから安心して」
と全く意味の解らない答えが返ってきた。
「じゃあ、あたし急いでるので」
このそっけない態度の何が気に入ったのか、はたまたほかの目的があるのか、
「まぁまぁ、女の子の一人旅は危ないしさ」
と赤毛の若者はニヤニヤしながらリリーの肩を掴んできた。
いきなりの行動に、脱げそうになったフードを
ほんの一瞬だけ若者たちの目にリリーの整った顔立ちと
「美人・・・」ともう一人の茶髪の若者がボソッとつぶやいた。
「ねぇキミ、名前は?
「だから興味ないからあっち行って!」と拒否するが、彼らには一向に響かなかった。
――「やっと見つけたぞ」
リリーの後ろから、
振り向くと、
男性にしては長めの茶色い髪、がっしりとした体つきだが細身で黒い
その男が
しかし、初めてみる顔だ。
もしかしたら若者たちの知り合いかもしれないと二人の顔を見るが、全く心当たりがないという顔をしている。
「赤いフードの女」
「え?あたし?」とリリーは自分を指さした。
ポカーンとしていた若者2人だったが、
「なんだよ!お前!邪魔すんな!」
赤毛の男が我に返り、吠え出した。
「ちょっと、ケイレブ、やめようよ」
茶髪の男はオロオロと、興奮した仲間をなだめている。
「はぁ?お前らに用はねぇよ!そっちこそ邪魔するな!」
と長身の男が言い返す。こっちも
端から見たら、女を取り合う男2人とオロオロと仲裁する男1人という
全く意味の解らない状況だが、同時にこれは
リリーは、言い争いをしている3人に気付かれぬように、そっとその場を後にした。
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