とにかく没頭して読める一作。世界観、文章、キャラクター、展開、設定、全てが一級品。
本来敵同士であるはずの魔女と審問官の見習いがバディを組み、数々のピンチを乗り越える。
特に白き魔女クリスティーが良い。強く、美しく、謎多き魔女。媚びることなく、折れることもない。かつてこんなに魅力的な魔女が存在しただろうか…?!
物語の展開も非常に秀逸。無駄がなく、読む側をハラハラドキドキさせるストーリー進行。文章や描写からも唯一無二のセンスの良さを感じるのは、作者様が元来もっているデザインセンスや色彩センスあってのものだと思います。
決して誰にも真似できない美しさが、ここにあります。未読の方はぜひ、期待大で読み始めてください。小説とは思えないほどの没入感を味わえます。
レビューを書く前に、唐突ですが。水彩絵の具の混色の話を。
黄金色。
残念ながら、水彩絵の具を混ぜ合わせて作ることはできません。
ある、特殊な方法が必要なんです。
普通に出会ったら、きっと相容れない二人。
それこそ、黄金の混色のように。
これこそ、この物語の醍醐味だと思います。
魔女を駆逐する教会の審問官、その見習いアルヴィス
その魔女の疑いをかけられた診療所の美しい医師、クリスティー。
そしてアルヴィスが所属する教会もまた、一枚岩ではなく。陰謀が渦巻いて。
まるで、禁断の果実を求めるが如く
人間関係は錯綜とし、真実は闇のなかに、埋もれていく。
この状況の中で、アルヴィスとクリスティーは出会うんですよね。
かたや、魔女を絶対に廃する。謂わば組織の狗。
かたや、本心はまるで晒さない、孤高の魔女。
アルヴィス青年は、目の前のことに良い意味で、まっすぐで。だからこそ翻弄されてしまう。
クリスティー医師は、強い女性を描くとしたら、一種の理想像かもしれないとすら、思ってしまう。彼女は媚びない。泣き言を言わない。誰かのせいにしない。
こんな二人が出会う可能性を「運命」という簡単な言葉では片付けたくないですね。
偶然、必然、不確定、確率、条件。
どれもが歪で。本来なら、色を混ぜたところで、反発する二人。
その二人がバディを組むことは、黄金を混色で彩るよりも難しいのは、確か。
黄金を混食で作ることはできません。金色という色はないのです。色に偏光物質を混ぜ込む必要がある。
アルヴィス青年とクリスティー医師が、黄金色へとつなげる「偏光物質」が何なのか。二人以外の魅力的な登場人物と織りなす、圧倒的なファンタジー大河。
この先は読んで確かめてみてください。
ただし、禁断の林檎ですから。
魔女の虜となって審問官に目がつけられても、当方は一切の責任を負いかねます。
それでは、審問官と魔女が待つ古都アルビオへ。
良き旅を。
まずは称えさせてください
最高の物語をありがとう!!!!!
ゴシック建築のおどろおどろしい建物、黒いウールや本革の重たげな衣装を身に纏った人々、「審問官」という不吉で禍々しい職業、凶悪な魔女や恐ろしい呪具…
濃厚に死の匂い立ち込めた過酷な世界が、正確無比な筆力によって、霧の流れまで見えるがごとく鮮やかに描き出されます。
いやもうこれは、小説を超えて映画!!!
ポッターシリーズ、薔薇の名前、ロード・オブ・ザ・リングシリーズ……そのあたりの中世近世ヨーロッパ重厚画作り超得意なスタジオの新作が、脳内に完全再現されていました。
読んでる最中、まっこと至福でした…
特筆すべきは正確無比な描写力だけでなく、プロット!!!
タフで過酷で、それでいてユーモラスなシナリオは、全く中だるみも脱線もなく読者を飽きさせず、最後まで奈落の底を走り抜けるジェットコースターに乗せ続けてくれます。
キャラクターも一人残らず魅力的です。
全員毒があって、どこかしらイカれていて、一筋縄ではいかないツワモノ揃い。
読めばわかる。
圧倒的な物語。
この残酷にして魂が震える世界を、ぜひ堪能してください。
そして書籍化…漫画化…アニメ化へと導き、ぜひ銀河爆発級アルティメットダイナマイトセクシー主人公アルヴィンくんのグッズを我が家に来臨させたもう!!!!!
なにとぞおおおおお!!!!!
魔法を用いて人々に害をなす存在、魔女がいる世界。
魔女を駆逐するために、審問官という存在がいた。
そんな審問官見習いであるアルヴィンは、父の死に関係していると思われる老審問官ベラナに師事し、父のことを知りたいと願う。
しかし、魔女と審問官それぞれが、アルヴィンが思いもよらない闇を抱えていた……
本作を一言で表現するなら、「銃と魔法のダークファンタジー」です
銃使いのアルヴィンと魔法使いの魔女たちが織り成すバトル物と見せかけて、実際には組織の陰謀が色濃く描かれたディープな物語です。
テンポのよいバトルシーンと息つかせぬ展開にワクワクさせられ、ページをめくる手が止まりません。
未熟な少年(ただし将来性は十分)vs巨大な悪の組織という構図が好きな方には、ぜひお勧めです。
※本レビューは、第一部(原初の魔女編 55話旅立ちの朝に)までを読了時点での内容となります
ミステリ要素のある、魔女狩りを主題にしたファンタジーですが火の魔女編から引き込まれました。
ファンタジーでも謎と解決という様式は、非常に便利で物語を面白くする手段の一つです。
この作品ではそれを効果的に利用し、意外な犯人まで作り出します。
まさか犯人があの人だとは。
魔女狩りといえば冤罪が有名ですがこの作品では善と悪の違いという哲学的なテーマにも踏み込んでいます。
善は何もしなくても善なのか。悪は存在するだけで悪なのか。
その答えはこの物語の先にあるかもしれません。
主人公の頭脳の良さや傲慢な態度、父親の復讐などキャラクターの造形も魅力的です。
何故魔女を殺すのか、その問は主人公だけでなく読者にも問いかけられているような気がします。しっかりと伏線がはられ、嘘を見抜く能力があるにもかかわらず巧妙に隠された犯人を当てることは、少し難しいかもしれません。
なのでやはり探偵役(審問官ですが)は頭が良くないと務まりません。
七日で犯人を見つけよと言われた主人公の手際の良さが説明的にならずに示されます。
この魅力的な世界観とストーリーを主人公とともに見ていきましょう。
ストーリー展開は比較的早いですが、だからといって読者を置いてきぼりにするようなことはありません。淡々と設定を開示するのではなく、そこに人間の感情や生活を見せることで、世界観を理解しやすくしています。恐らく、設定をストーリーに落とし込むのがうまいのだと思います。
キャラクター性の表現については、設定を開示しながらもそれに寄りかかりすぎることはなく、ストーリーの流れの中で、そのキャラクターの発言や身なり、一挙一投足から表現していて、すっと頭に入ってきます。
特に主人公、アルヴィンの価値観は、様々なストーリーを通して少しずつ、しかし確実な繋がりを持って開示されていくため、彼が何故そのような価値観を持つに至ったかまで、自然と理解できる作りになっています。
更にそれが「火の魔女」の章の秘密に繋がっていくため、無駄のない構成になっているといえます。
魔女と審問官の関係性は、敵対的でありながらも、その審問官の魔女に対する認識は果たして真実なのか、疑問が投げられています。
魔女の定義も「火の魔女」の章では曖昧で、次章で少しずつ明らかにされていく。
それも、ただの設定の説明という形ではなく、「不死の魔女」を通じて語られる様々な秘密と関わり合い、まるで共鳴するかのように理解することができます。
総じて、ストーリーの展開とそれに合わせた設定の開示が巧みで、読ませる力のある作品といえるでしょう。
キャラクターに関しては、主人公のアルヴィンの目的が一貫しているものの、魔女や枢機卿などの秘密を知る中で、葛藤が生じるさまが繊細に描かれています。
他のキャラクターに言及するのなら、いわゆる敵方に属するキャラクターたちが生き生きと、そしてその裏での闇が濃密に描かれ、魅力的に映ります。その闇の濃さを引き出しているのは、それまでに判明している設定であり、そこに至るまでのストーリーだと思います。
ストーリーの巧みさが、キャラクター性を補強しているといえるでしょうか。
そして、その闇を生み出したものの正体が明らかになるとき、アルヴィンたちの反撃がはじまる――。
審問官見習いのアルヴィンは、白き魔女を追っている。彼には魔女と会わねばならない理由があるが、その目的を遂げるためには、上級審問官ベラナの信頼を勝ち取らなければならない。ベラナから下された課題は困難だった。先輩諸氏が半年かかっても解決できなかった事件、すなわち火の魔女の駆逐を、わずか一週間で果たせというのだ……。
物語冒頭から逆境に放り込まれる主人公だが、これをものともしない強さが彼にはある。老練なベラナと生意気なアルヴィンのやり取りには読者も笑みを浮かべるだろう。
火の魔女の疑いをかけられているのは、診療所のクリスティ-という医師だった。アルヴィンは、彼女と秘密の関係を結ぶ。ここから先は、ぜひご自身の目で。
アルヴィンとクリスティ-の生い立ち、教会を巡る陰謀、原初の魔女にまつわる伝承。この作品を彩るのは異世界幻想の精髄だ……と思って油断していたら目ん玉が飛び出ること請け合い!
数話を読めば誰にでもわかる。『白き魔女と黄金の林檎』の本性は、ファンタジー世界を舞台としたサスペンスであるということが。
ファンタジーには一定のテンプレートがあり、読者は何とはなしに展開を想像しながら読み進める。作家は、そのような読者の想定を少しずつ裏切りながら筆を進める。予想の裏を取られ、また取られ、いつの間にか当初の想像から遥かにかけ離れた場面に至る快感を、サスペンスの読者ならば知っていることだろう。その極致こそがこの作品だ。
それにしても、ファンタジーとサスペンスがここまで幸福に結合した例は、他にあっただろうか?
物語のダイナミズムは章単位ではなく一話単位で訪れる。この点はWEB連載の醍醐味かつ模範であるとも言えるかもしれない。WEB小説戦国時代ともいえる現在、長尾景虎は誰かと問われたら、わたしはこの作品を推したい。
つまり、格好良いですよ?
眠れない夜などに一気読みしたら、更に眠れなくなります。
最新話の凶音の魔女編反省会場まで拝読しました。
魔女という、長年擦られ続けた題材で、ここまで血肉湧き踊る作品を書かれていることが、率直に素晴らしいと思います。
あらすじは各章で作者様が丁寧にまとめているので、私から多く語ることはありません。ぜひそちらを参照してください。
自分自身も小説を書く者として、多くを学ばせていただいている作品です。
Web小説は視覚的にも限られた画面の中で物語が展開する世界です。表示された画面の文字をどれだけ読者に読んでもらえるかが鍵だと、個人的に思っています。そのためには内容云々はもちろんですが、「読みやすさ」が大きなアドバンテージを占めるのではないでしょうか。
こちらの作品は、その「読みやすさ」が群を抜いています。一つのシーンを表現するための的確な言葉選び、改行、台詞回しが絶妙だと思いました。くどくなく、率直に、短く、それでいて深い。一言で表するなら「センス」ですが、その中で作品自体に真摯に向き合う作者様の愛情を感じました。
分かりやすいけどちゃちじゃない文章は秀逸です。特に戦闘シーンはひらめきやどんでん返しなど、わくわくする要素がたくさんあります。謎の散りばめ方、回収のテンポも心地よいです。もう、ただただ絶賛です。恐れ入りました。
私が今年読んだ作品の中で間違いなくナンバーワンと言える作品です。読み専の方にはもちろん、小説を書く方にもぜひ読んでいただきたいです。