まるで黄金を混色で彩るような、奇跡的なバディ

レビューを書く前に、唐突ですが。水彩絵の具の混色の話を。

黄金色。
残念ながら、水彩絵の具を混ぜ合わせて作ることはできません。
ある、特殊な方法が必要なんです。

普通に出会ったら、きっと相容れない二人。
それこそ、黄金の混色のように。
これこそ、この物語の醍醐味だと思います。

魔女を駆逐する教会の審問官、その見習いアルヴィス
その魔女の疑いをかけられた診療所の美しい医師、クリスティー。

そしてアルヴィスが所属する教会もまた、一枚岩ではなく。陰謀が渦巻いて。
まるで、禁断の果実を求めるが如く
人間関係は錯綜とし、真実は闇のなかに、埋もれていく。

この状況の中で、アルヴィスとクリスティーは出会うんですよね。
かたや、魔女を絶対に廃する。謂わば組織の狗。
かたや、本心はまるで晒さない、孤高の魔女。

アルヴィス青年は、目の前のことに良い意味で、まっすぐで。だからこそ翻弄されてしまう。
クリスティー医師は、強い女性を描くとしたら、一種の理想像かもしれないとすら、思ってしまう。彼女は媚びない。泣き言を言わない。誰かのせいにしない。

こんな二人が出会う可能性を「運命」という簡単な言葉では片付けたくないですね。

偶然、必然、不確定、確率、条件。
どれもが歪で。本来なら、色を混ぜたところで、反発する二人。
その二人がバディを組むことは、黄金を混色で彩るよりも難しいのは、確か。

黄金を混食で作ることはできません。金色という色はないのです。色に偏光物質を混ぜ込む必要がある。

アルヴィス青年とクリスティー医師が、黄金色へとつなげる「偏光物質」が何なのか。二人以外の魅力的な登場人物と織りなす、圧倒的なファンタジー大河。

この先は読んで確かめてみてください。
ただし、禁断の林檎ですから。

魔女の虜となって審問官に目がつけられても、当方は一切の責任を負いかねます。

それでは、審問官と魔女が待つ古都アルビオへ。
良き旅を。

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