第3話

pppp.pppp.pp…...

朝6時。家を出る時刻だ。

私の職場...というか、お手伝いに行っているところがある。

東京から約1時間半、わが家ではおなじみのボロ自転車で埼玉県南部の農家の畑仕事のお手伝いに行く。東京から通える地域で、まだAI化がすすんでいない、老夫婦2人で経営している、小さな農家だ。平日の夕方まで、ここで野菜の収穫をする。

「おはようございまーす」

「おう、おはよう。」

「おはよう〜今日もわざわざありがとうねぇ」

ここには16の時、おばあちゃんが亡くなってから、大家さんに紹介してもらって働くことになった。両親の代わりにずっと面倒を見てくれたおばあちゃんが亡くなった私を支えてくれた、本当に家族みたいな人だ。




ここで野菜の収穫を手伝ったり、出荷の準備をしたりする代わりに、売れ残った野菜を少し分けてもらう。たまに、おばあさんの若い頃の服や家具をもらうこともある。

実は、このボロ自転車も、おじいさんに修理してもらったんだ。


「じゃあ、今日はこれで失礼します。キャベツとジャガイモ、もらって行きますね。」

「今日もご苦労様。あ、そういえば今日、奏ちゃん誕生日じゃなかった?」

「あ、はい!18になります。覚えててくれたんですか?」

「当たり前じゃない!誕生日おめでとう。

 それで、私達からのプレゼント。こんなものしかあげられないけど、、、」

「え!いいんですか!!!ありがとうございます(T_T)」


帰り道、るんるんしながら自転車を飛ばす。

誰も通らない帰り道、沈んでいく夕日と涼しい風が気持ちよかった。

「たっだいまー!!!!!」

「おとうさん、おかあさん!あたしね、今日農家のおじいさんとおばあさんから、お誕生日プレゼントもらっちゃった〜!あ、安心してよね、おばあちゃん。ちゃんとお礼いったんだから!よし!!今日は芋煮だ〜っっ!!!!」


おなべでジャガイモを煮ている時、プレゼントをいそいそと出してきた。

ばっと居間に広げる。うん!ぴったりだ!

シンプルだけどどんな雰囲気にも染まれる真っ白のパーカー。

農家のおじいさんおばあさんは本当に私のことをわかっている。

嬉しくなって鏡の前でずっと服を眺めていた。

...あれ、なんか焦げ臭い...

芋煮!!!!!!



「おばあちゃん、芋煮焦がしちゃいました。。。」

三人分、なんとか焦げてないところをすくって、いびつな芋煮のお供え物が完成。。。

「三人とも、そんな目で私をみないでよ(._.)

 あーあ、私も18になってもまだまだおばあちゃんにはかなわないや。」

焦げた芋煮をすくって自分の器に入れた。ジャガイモを口に頬張る。

うん。どう下手に調理してもうまいもんはうまい。美味しい...美味しすぎる...




気がついたらオトがはいって来ていた。

「オト、お供え物たべちゃだめぇぇぇぇ(TдT)/」


ということで記念すべき18歳1日目は猛スピードでどっかへ行ってしまった。

「おやすみ。今年もいい年になりますように。」


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