第8話
pppp…pppp..pp
「おばあちゃん、行ってきます。」
朝日が街を照らす。
今日もいい天気だなぁ
「いってきまぁぁぁぁす!!」
ああ、めんどい。まじでめんどい。
なんで祝日なのに飲み会に行かなきゃいけないんだよ。ったく
「俺のせっかくの休日がぁぁぁ(TдT)」
壁の薄いアパートの一角で、新井は声を荒らげた。
なぜこの男がこんなにも不機嫌なのかというと、遡ること一昨日のこと。
「明後日の祝日に二人で飲みに行かないかって?」
俺は目を丸くした。何を言っているんだこの男は。
「...なんでですか?」
男、まあ男っていうのはうちの上司なんだけど、そいつはけろっとした顔でこう言った。
「なんでって...なんだか新井、最近変わったなと思ったんだ。
随分と元気そうじゃないか。前までの無愛想な感じとは大違いだ。」
「無愛想って...」
確かに俺は最近笑うことが増えた。
同僚からもびっくりされるほどに。
きっとあのギター少女に会うようになってから、俺は変わったんだと思う。
だけど!だけどもよ!
なんで俺がちょっと元気だからって言ってわざわざ嫌いな上司とふたりきりの飲み会に
行かなきゃいけないわけ?!
しかも明後日って...バリバリの祝日じゃんか!!
俺のハッピーラッキーホリデーが...(TдT)
「...どした?新井」
「い、いや、なんでもないです...」
「じゃ、明後日で決まりな。」
「は、はい...」
と、まあなんだかんだあって、見事新井の”ハッピーラッキーなんちゃら”は
お預けとなったというわけだ。
「嫌だよおおおお嫌だよおお
祝日の夜は貴重なんだよおおおおおおお!!!」
ブツクサ文句を言いながら新井は身支度を整えた。
「酒は飲みたいけどもよお...あいつとかよ...」
ふと壁にかけてある時計を見ると、時刻は6時を差していた。
「6時半...集合が7時...家から集合場所まで30分.......」
遅刻する!!!!!!
新井は部屋の中のありとあらゆるものにぶつかりながら
猛スピードで出掛けていった。
本当にこいつは教師なのだろうか。。。
「はあ、はあ、ぎ、ギリギリになっちゃってすみません...」
「いや、丁度ぴったり。さ、行こうか。」
「は、はい」
新井とその上司は渋谷の中心街から少し外れたところにある焼き鳥屋に入っていった。
(祝日に呼び出しといて焼き鳥かよ...)
新井は上司の神経を心の底から疑ったが、どうにかそれが顔に出ないように振る舞った。
「じゃあ、新井君。君に聞きたいことがあってな。
最近どうも新井のクラスの生徒の教育が足りていないようなんだ。
そもそも子供というのは大人に比べて神経の発達が...」
(こりゃ相当時間が掛かりそうだ...)
1時間後...
「いやあほんとにかないませんよ先輩〜(*´∀`)」
「いやいや、新井のほうこそ本当によくやっておるぞ!
もっと飲め!金は出すぞ!」
「じゃあお言葉に甘えてっ...くぅ〜っ!うまいっ!
やっぱり先輩と飲む酒が一番美味いですよ〜!」
「嬉しいこと言ってくれるじゃないか!ハッハッハッハッ
新井は最近本当に変わったなあ〜一体何があったっていうんだぁ?」
「じつは...最近とっておきの隠れ家を見つけたんです!
渋谷の交差点あたりの古い建物なんですけど、めちゃくちゃいいっすよ!
あ、ここから20分くらいなんで行きましょうよ!」
「おお、それは是非とも行ってみたいなぁ〜」
ああ〜俺ってなんていいやつ!
上司もあの秘密の地下室、きっと気にいるだろうし、あのギター少女も
客が増えて喜ぶだろう。あいつ、まだいるかな、もう夜遅いけど行ってみるか!
焼き鳥屋から出た時、すでに空は暗く、重い曇天が月を覆っていた。
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