第9話

「ただいま~!あぁぁ疲れたぁぁ」

午前中だけとはいえ、太陽の照りつける畑での仕事は大変だ。

そのうえ1時間半も自転車を漕いで帰ってきたので、奏は家につくやいなや畳の上に

倒れ込んだ。

「もうくたくただよ〜(TдT)」

気がつくとオトがやってきていて、奏の横にちょこんと座っていた。

「ふう...ごはんにするか。」


キッチンに響く包丁の音。


サクサクサクサク

トントントン

シャッシャッシャッ

ジューッッ


部屋中がいい匂いに包まれた。

はあ〜幸せ。。。

「おまたせしましたっ!オムレツ定食っ!」

4つの小さなお皿に小さな、ちょっと歪なオムレツを乗せる。

これでも上達したほうなんだからね??

「はい、オトにはささみとキャベツだけ」

オトは嬉しそうに尻尾を振った。




「ごちそうさまでしたぁ」

はあ...こんなにゴロゴロしたのはいつぶりだろう〜

…まあ言うて一週間前か。笑

「あ、そうだイチゴ!」

奏は急に起き上がると、いそいそとあの歪なイチゴ達を持ってきた。

ジャムにするんだった〜♪♪♪


しゃく、しゃく、しゃく、しゃく

サクサクサクサク

トントントントン


小さく切ったイチゴとたっぷりの砂糖を鍋に放り込み、コトコトと煮る。

簡単だけど、これで本当に美味しいいちごジャムが出来るんだ〜


コトコトコトコト

コトコトコトコト


….


コトコトコト

ボコッボコボコ

ボコボコボコボコ



ワン!ワン!ワン!ワン!


「はっ!!」

。。。寝てた。

え、なんか臭い...なんの匂いだこれ?



…イチゴ!!!!!



気がつくとイチゴがグラッグラに煮えてた。

コトコトなんて次元じゃない。

「ヤバイヤバイヤバイ!!!」

急いで火を消し、鍋を掴んだ。

「あっっつ!!!!!」




はあ...なんとかイチゴは救済できた...

あちちちち....

ちょっとばかり焦げてしまったけれど、ほんとに上出来だ。

よし。これを秘密の音楽部屋に持っていこう!

可愛い瓶に入れて〜♪♪

お気に入りの白いパーカーを着て、奏はるんるんで家を出た。

仕事帰りとは大違いの力で自転車を漕ぐ。

「いってきま〜すっ」









「遅いなあ...」

もう何時間も待っているのに、あいつ全然来ないじゃん。

もう飽きちゃったのかな〜。。。

確かに、いつも同じ歌ばっかり弾いてるけどさ、、、


はるか

月を目指した

今日の空は

かなた

星に流れた

もう届かないや

ああ

届かないや


__1曲歌ってくれ__

__うぇ?__

__1曲だよ、お前日本語もわかんないのかよ__


….


__俺さ、今まで沢山の人間見てきたけど__

__うん__

__お前、変わってるな__

__ふーん、そうかな__

__ま、そのままでいろよ__



そのままでいろ、、って言われてもさあ...

結局あんただって私をおいていくんじゃん。。。

私はおもむろに、ステージの上においてあるベースを見た。



バンッッッ



急にドアが開いた。私はびっくりしてとびあがりながらも、そっとドアのほうを見た。

そこには...

「新井!!!お前遅いぞ!...って、、、、」




新井と、もうひとり、見知らぬ顔がいた。


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