第7話
pppp…ppppp….pp..
「ふぁああ、おばあちゃん、行ってきます。」
午前6時。自転車で埼玉に向かう。
5月の風が髪を撫でる。気持ちの良い朝だ。
「おはようございま~す!」
「あら、奏ちゃんおはよう」
「奏、今日はイチゴの収穫だぞ〜。余ったり形が歪なものは持って帰りなさい」
「ホントですか!ありがとうございます!!」
本当に今日はラッキーだ。ここのイチゴはめちゃくちゃに美味しい
まあ、野菜畑の隅で育てているのだから、スーパーに並ぶごろごろのイチゴとは比べ物にならないけど、、そんな歪なイチゴが大好き。
「じゃあ、先畑に向かってますね!」
「おう、あんまり急いで転ぶなよ〜」
「やっと終わった〜!」
気づけば空は赤く染まり始めていた。
うっすらと月が見え始めている。
「お疲れ様、奏ちゃん。はいこれ、イチゴ。
随分変な形だけど、美味しく食べてね」
「ありがとうございます!やった〜イチゴだぁ〜」
おばあさんがにっこりと微笑んだ。
「最近奏ちゃん随分と元気ね。おばちゃんも嬉しいわ。」
「え、そうですか?あんまり普段と変わらないと思うんだけどな〜」
「じゃあ、お先に失礼します〜!」
自転車をビュンビュン飛ばす。
イチゴ!イチゴ!なんにしようかな〜
ジャムにする?練乳で食べる?やっぱそのままが一番かな〜
「たっだいま~!」
家に帰るとオトが尻尾を振って出てきた。
「オト〜来てたんだね〜。今日はなんと!農家のおじいさんおばあさんからイチゴをもらっちゃいました〜!」
キッチンでサクサクとイチゴを切る
細切れのはオトに。お父さんお母さん、それからおばあちゃんには、
小鉢で3個づつ。最後に一番小さな器に1個、歪なイチゴをのせた。
「ちょっと歪だけど、これでもマシなやつを選んだんだからね?
ま、味は保証するから、味わって下さい。」
写真棚にお供えをしてから自分も一口頬張った。
「おいしい....めちゃくちゃに美味しい...!!!!!」
オトも夢中で器に顔を突っ込んでる、相当気に入ったみたい笑
明日は祝日だから、仕事は午前中でおしまい。一度帰ってから音楽部屋に行こう。
そうだ、新井!新井にイチゴを持っていこうかな。ジャムかなんかにして。
あいつイチゴ好きなんかな、多分気に入ってくれるよね。
「はあ〜早く明日にならないかな〜(TOT)」
空になったお皿をペロペロと舐めていたオトが不思議そうに顔を上げた。
「おばあちゃん、おやすみなさい。」
いつもよりちょっとだけ早く布団に入った。
毛布を頭まで被り、小さく深呼吸をして、メロディーを口ずさむ。
はるか
月を目指した
今日の空は
数多
星を降らした
夢じゃないや
夢じゃないや
ああ
「夢じゃないや」
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