第6話
それからというもの、新井とかいうやつは毎週のようにこの音楽部屋に来るようになった。
最初こそやばいやつが来たと思ったものの、案外いいやつのようだ。
はるか
月を目指した
今日の空は
かなた
星に流れた
もう届かないや
ああ
届かないや
「お前、いっつもそればっか弾いてるけど、それしか弾けないのかよ」
「うっさいな〜もう、別にいいじゃん」
いつも私の曲にブツクサ文句言うくせに、なんだかんだいって毎週末現れる。
こいつも相当暇なんだろうな。
「じゃあ、またな」
「ほーい」
最近新井が来るようになってから、奏はなんだかうきうきしている。
自分でもよくわからないくらい気持ちが浮いているのだ。
新井の方も、最初に会った時と見違えるほどに、
いきいきとした顔色をしている。
学校の上司に疑いの眼差しを向けられるほどだ。
「だだいまぁぁぁぁぁぁ疲れだぁぁぁぁぁぁぁ」
秘密の音楽部屋から帰ってきて時計を見ると、時刻はもう夜の9時だった。
流石に墨田区から渋谷まで行って帰ってくるのはキツすぎ・・・
「おばあちゃん、奏、ただいま帰りました。今からご飯作るね」
でも、仕方ないよな、
ここらへんで隠れて音楽ができるとこなんてないし、
もしご近所さんに見つかりでもしたら・・・
「やばいことになる泣」
それに、あそこはいつでも、私を受け入れてくれる気がするのだ。
ボロいステージに、ボロいベースとギター。
ちょっとボロすぎだけど、
「とても心地よい場所」
奏はふと、写真棚に目をやった。
・・・
オトだ。
・・・
「オト、写真食べちゃだめぇぇぇぇぇぇぇ(TдT)/」
「そんなこんなで・・・ご飯焦がしちゃいました・・・」
はあ、、せっかく最近はご飯も上手くできてたのにな〜
「でも、おこげ美味しいからいっか。」
ほかほかのご飯を頬張る。最近やけにお米が美味しい。
「ふんふふーん、ごちそうさまでした!」
食器を片付けていると、オトが不思議そうにこちらを向いていた。
「どした?オト」
オトはなにか言いたげに私の顔を見て、急にプイ、とどこかへ行ってしまった。
「なぁに?変なの〜」
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