第2話

2044年4月6日

「おばあちゃん、お父さん、お母さん、私もとうとう18歳になりました。

 これからも私のこと、空から見守っててね。」

「午前0時、わたくし三河奏、18歳です!おめでとう自分!!」

自作の誕生日ケーキを一人で頬張る。うん、去年よりはうまいかな。

まだまだ上達しない手作り餃子を食べていた時、部屋のドアがカリカリ音を立てた。

ドアを開けると、1匹の犬。

「オト!あ〜君も私の誕生日を覚えててくれたの?」

オトは、まるで自分の領地のように悠々と部屋に上がると、餃子をあっという間に食べてしまった。あーあ、頑張って作ったのにこんなに早く・・・

ま、いいか、どうせ1人だし。

「おいし?」

オトはうんと言いたげにしっぽを振った。いや、もしかしたら私にしかそう見えてないかもだけど。


ここは東京のど真ん中。よりちょっと東の墨田区。

私、三河奏はもともとおばあちゃんと一緒に住んでいた家に、大家さんのご厚意によってタダで住まわせてもらっている。今は大家さんも家の経営が難しくなったから、他に別の仕事をしているそう。大家さんいわく、私は「随分変わった子」だそうなんだ。

まあ、それもそうかも。確かに私の幼稚園の頃の友達はみんな名門大学に行くために必死に勉強を重ねているらしいし、周りを見渡しても誰も鼻歌うたいながらのんきに歩いたりしてない。

でも、いいかもしれない。


こんな速歩きの世界で、一人だけ、のんびりがいたって。


そんなことを思いながら、私は最後に残された餃子の残りカスをかき集めて食べた。

今日は朝から予定が詰まってるからもう寝よう。

「オト、お休み。ドア開けとくから勝手に出ていっていいよ。」

あ、オトはそこらへんの野良犬で、勝手にオトって呼んでるだけ。

もう結構なご高齢みたいで、おばあちゃんと一緒に時々面倒見てた。

私達の、守護神、、的な?うん。



「もう、14年か..............なくしてから」

4月6日、午前0時46分。

私はベッドの中に潜り込んで、そんなことを考えていた。



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