第16話(最終回)

「届かないや」




「届かないや...」

雨に負けそうになりながらも、私は歌いきった。

パッと顔を上げ、ゆっくり微笑んだ。

そして、最後に一言、呟いた。




「さようなら」




「待て!!!!!」

その声にびっくりして、私はバランスを崩した。

あ、落ちる________________






…目を開けると、、、私は相変わらず屋上にいた。

震える手は、誰かに固く握られていた。




「新井....」

私がバランスを崩し、落ちかけた時、新井が手を引っ張って陸へと引き戻したのだ。

「ごめん.....本当にごめん......!!お願いだから、早まらないでくれ...!」

新井は泣きながらそういった。

「もうこれ以上、俺の周りからいなくならないでくれ...」

私はハッとした。


こいつは、、、私が突き放したにも関わらず、私を必死で止めに走ったのだ。


「お前がもし、自分は一人ぼっちで、誰からも必要とされない人でなしだと思っているんだったら、それは違うぞ!!」

「お前は、俺の心を救った!こんなろくでなしの俺に、生きる希望を与えた!

お前がいらないわけがないんだよ!!」


私は、気がつくと涙をこぼしていた。

もう乾ききったはずの涙が、あとからあとから溢れ出してきた。


「お前は!俺のヒーローだ!!日本中に、お前を必要としている奴らがいるはずだ!

この先、どんなことがあるかわからない。だけど、だけどな!

これだけは忘れんじゃねえ!お前には俺がついてる!!」


涙が、止まらなかった。



「....あ.......」



何かに気がついて顔を上げると、奏は小さく笑った。

「....雨、止んだね」






梅雨明けの空には、虹がかかっていた。




奏は、心から笑った。









もうすぐ、夏がやって来る。



終わり











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奏でる、カナデ ひつじちゃん☁ @hituzichan

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