第4話

次の日の朝。待ちに待った休日だ。

昨日のジャガイモを口に放り込んで、いそいで準備をする。

私は毎週の休日、密かに行っていることがある。

といっても、そんな大掛かりなことではない。

私が勝手に使っている、地下の「秘密の音楽部屋」だ。

地下室の鍵を開けると、すぐにオトは部屋の中に入り込んで、ステージの上に

ちょこんと座った。いつもの、ほこりっぽいけれど、どこか懐かしい匂い。私の、一番のお気に入りの場所だ。



休日はここで、ギターの練習や歌の練習をする。

大都会だけれど、街を歩く人はみんな、時間を惜しむように速歩きの移動なので

ほとんどの人が、この場所の存在に気が付かない。

静かな部屋の中にきれいなギターの音色が響く。ここだけが、音楽の許される場所。


はるか

月を目指した

今日の空は

かなた

星に流れた

もう届かないや

ああ

届かないや


私の大好きな音楽。大好きで、大好きで、暗い暗い空に差す、たった一つの、私の光。


だけどそれを、音楽を、




誰にも分け合うことは許されない。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る