継嗣の若君と、鍵を握る姫。二人が築く新しい時代の物語

あやかしの国「阿の国」の北部を統治する王の息子、碧霧。
彼は身分を隠して出掛けた先で、紫月という女の子と出逢います。

高貴の身を明かすわけにはいかない碧霧は、素性を隠します。
一方の紫月も、とある事情を抱えていました。
そのため、二人は探り合いのような逢瀬を重ねます。

出逢った瞬間から惹かれ合っていたような二人ですから、読者としては、この恋愛はうまくいくと安心しております。
隠しごとをしているからこその遣り取りは、面白くもあり、まどろっこしくもあり。
楽しく読み進めることができます。

けれど、物語が進むうちに、恋を実らせることは、始まりに過ぎなかったのだ、と感じるようになりました。

碧霧は、王の息子として。
紫月は、彼女の事情に関することで。

互いに秘密にしていた「それぞれが抱えている運命」。
これを「一緒に背負っていく」ために、二人は愛を育んでいるような気がしてきました。

守るだけじゃない。守られるだけじゃない。
手を取り合う相手がいるからこそ、背負わされた運命にも立ち向かえるのではないかと思います。

最新話では、天真爛漫な魅力で紫月が周りを圧倒させ、苦労人としかいえない状況の碧霧が水面下で着々と準備を進めている模様――。

この二人だからこそ、の展開を期待しております!


また、この作品は、『九尾の花嫁』『藤の花恋』に続くシリーズとなっていますが、作者様曰く、「どの作品から読んでも大丈夫」だそうです。
そのお言葉を信じて、私はこの『月影を統べる王と天地を歌う姫』から読み始めました。
そして、まったく問題ないことを確かめました!

前作が未読だから分からない、ということはありません!
むしろ、現代っ子の紫月がヒロインの今作は、私にとって、とっつきやすく、この作品から読んで正解だったのではないかと思っております。

あまりにも面白かったので、最新話まで読んだあと、『藤の花恋』を読み始め、そのあとも、まだまだ、この世界に浸りたくて『九尾の花嫁』を読破しました。
面白いです。実に面白いです。寝不足になりましたが、後悔はありません。
「どっぷりハマれる」と、太鼓判を押せるシリーズです!

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