この幽世の美しさは、唯一無二!!!

ちょっとこれは、他では見られない作品ですね…!

丹念に練り上げられた世界観。
頭の中で明確に像を結ばせる、鍛え上げられた描写力。

ものすごい精度を持って心底美しい世界が目の前に広がるんですが、それはどこか儚く、リアルなのに夢の中のようなんです。

物語の舞台は、人間どもの薄汚い現世ではなく、あやかしたちの世界。

常世、幽世、桃源郷…もしそういったものがあるとしたらこんな場所なのではないかと想像するような、儚くも美しい世界を、作者様の繊細にして正確無比な文体が、完ッ璧に作り上げています!

黄昏刻の光に染まり、春の風が吹いていて、どこからか香の匂いが漂う深い山。

人間の身には立ち入りを許されない、あやかしたちの秘められた国を覗き見しているようで、読んでいると、見つかってしまいそうな恐ろしさ、人間は仲間に入れてもらえないだろうなという切なさ、もっと見せてほしいという好奇心でドキドキします。

阿の国に生きるあやかしたちは、皆さん個性豊か!
まるで人間のように、生き生きと暮らしています。

主人公の超絶イケメン碧霧殿は、次期惣領としての鬱屈を抱えた繊細な青年――というだけではなく、意外とやり手で世慣れているところ、グイグイ行けるけど結局は好きな女の子には負けちゃうところがカワイイです。

もう一人の主人公の紫月ちゃんは、抑圧されてきた生い立ちを物ともしない真っ直ぐさ!
気が強くて跳ねっ返りだから向こう見ずなのかと思いきや、想像以上に思慮深く、愛情深いヒロインに、碧霧殿が惚れる前に惚れてしまいました。

そろってみんな気高くて、誰も彼も愛すべき鬼たち――なのですが、端々に「人間ではない」ということを悟らせるポイントが描写されていて、ゾクッとさせてくれます。

少しずつ明らかになっていく謎、じれじれと近づいていくお若い二人、ため息が出るほどに美しい幽世の世界。

名所ばかりのこちら、ぜひ追ってみてください!!!

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