月影を統べる王と天地を歌う姫【沈海平反乱編】

作者 すなさと

55

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★★★ Excellent!!!

あやかしの国「阿の国」の北部を統治する王の息子、碧霧。
彼は身分を隠して出掛けた先で、紫月という女の子と出逢います。

高貴の身を明かすわけにはいかない碧霧は、素性を隠します。
一方の紫月も、とある事情を抱えていました。
そのため、二人は探り合いのような逢瀬を重ねます。

出逢った瞬間から惹かれ合っていたような二人ですから、読者としては、この恋愛はうまくいくと安心しております。
隠しごとをしているからこその遣り取りは、面白くもあり、まどろっこしくもあり。
楽しく読み進めることができます。

けれど、物語が進むうちに、恋を実らせることは、始まりに過ぎなかったのだ、と感じるようになりました。

碧霧は、王の息子として。
紫月は、彼女の事情に関することで。

互いに秘密にしていた「それぞれが抱えている運命」。
これを「一緒に背負っていく」ために、二人は愛を育んでいるような気がしてきました。

守るだけじゃない。守られるだけじゃない。
手を取り合う相手がいるからこそ、背負わされた運命にも立ち向かえるのではないかと思います。

最新話では、天真爛漫な魅力で紫月が周りを圧倒させ、苦労人としかいえない状況の碧霧が水面下で着々と準備を進めている模様――。

この二人だからこそ、の展開を期待しております!


また、この作品は、『九尾の花嫁』『藤の花恋』に続くシリーズとなっていますが、作者様曰く、「どの作品から読んでも大丈夫」だそうです。
そのお言葉を信じて、私はこの『月影を統べる王と天地を歌う姫』から読み始めました。
そして、まったく問題ないことを確かめました!

前作が未読だから分からない、ということはありません!
むしろ、現代っ子の紫月がヒロインの今作は、私にとって、とっつきやすく、この作品から読んで正解だったのではないかと思っております。

あまりにも面白かったので、最新話まで読ん… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

ちょっとこれは、他では見られない作品ですね…!

丹念に練り上げられた世界観。
頭の中で明確に像を結ばせる、鍛え上げられた描写力。

ものすごい精度を持って心底美しい世界が目の前に広がるんですが、それはどこか儚く、リアルなのに夢の中のようなんです。

物語の舞台は、人間どもの薄汚い現世ではなく、あやかしたちの世界。

常世、幽世、桃源郷…もしそういったものがあるとしたらこんな場所なのではないかと想像するような、儚くも美しい世界を、作者様の繊細にして正確無比な文体が、完ッ璧に作り上げています!

黄昏刻の光に染まり、春の風が吹いていて、どこからか香の匂いが漂う深い山。

人間の身には立ち入りを許されない、あやかしたちの秘められた国を覗き見しているようで、読んでいると、見つかってしまいそうな恐ろしさ、人間は仲間に入れてもらえないだろうなという切なさ、もっと見せてほしいという好奇心でドキドキします。

阿の国に生きるあやかしたちは、皆さん個性豊か!
まるで人間のように、生き生きと暮らしています。

主人公の超絶イケメン碧霧殿は、次期惣領としての鬱屈を抱えた繊細な青年――というだけではなく、意外とやり手で世慣れているところ、グイグイ行けるけど結局は好きな女の子には負けちゃうところがカワイイです。

もう一人の主人公の紫月ちゃんは、抑圧されてきた生い立ちを物ともしない真っ直ぐさ!
気が強くて跳ねっ返りだから向こう見ずなのかと思いきや、想像以上に思慮深く、愛情深いヒロインに、碧霧殿が惚れる前に惚れてしまいました。

そろってみんな気高くて、誰も彼も愛すべき鬼たち――なのですが、端々に「人間ではない」ということを悟らせるポイントが描写されていて、ゾクッとさせてくれます。

少しずつ明らかになっていく謎、じれじれと近づいていくお若い二人、ため息が出るほどに美しい幽世の世界。

名所ばかり… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

あやかしの国「阿の国」。その北の領を治める鬼の一族の息子である碧霧と、ただ偶然に出会ったのは鬼の女の子である紫月。


出会った当初は自身の正体を隠すためにちいさな嘘を重ねたり、互いを探り合ったりと恋の駆け引きが続きます。


しかし阿の国で起こった反乱、そして今も残る悪習など、二人の意思とは別に周囲は慌ただしくなるばかり。そんな中でも時には笑い合ったり、時にはお忍びデートをしたり、時には喧嘩をしたりと、二人の関係もすこしずつ恋へと近付いていきます。


天真爛漫な姫さまの紫月、たおやかな外見とは裏腹に芯の強い彼女はいつでも一生懸命、そして彼女のファッションも素敵です。碧霧もまた父親との確執や自身の置かれた立場に対して、まっすぐに向き合っています。時折年頃の男のらしいところも見せるのですが、それがまたなんとも微笑ましいです。
どちらも応援したくなりますし、二人の恋の行方にも目が離せません!




前作の『藤の花恋』に続いて楽しませて頂いてます。
なおこちらの作品はシリーズとして続いていますが、それぞれ独立したお話ですのでどのお話から読んでも楽しめます。前作から読んでもよし、今作から読んでみてもよし、どちらも読むと二倍楽しめることは間違いなしです!

★★★ Excellent!!!

前作『九尾の花嫁』も大興奮で2周(!)読ませて頂きましたが、こちらも前作に負けず劣らずの力作です!

作者様の書くあやかしの世界の美しさや正しさ、醜さなどは人間世界の裏返しのようで面白くもあります
主人公以外の登場人物も立っており、かならず登場する「イケオジ」の存在も見逃せません

あと特筆すべきは世界観のち密さ
しつこくないさりげない描写が素晴らしいです

男性キャラよりも女性キャラが多くて魅力的なのも恋愛もので見られない特色ではないかと思います

今一番私の中で熱い、おすすめの作品です!

★★★ Excellent!!!

 読んでまず引き込まれるのは、鮮やかで魅惑的な世界観。
 今住んでいる世界の先に、本当に「阿の国」はあるのでは、と思うようなリアルさがありながら、地形や制度はもちろん着物や生き物などどれをとっても、わくわくに満ち溢れています。

 そしてそこに住むあやかし、碧霧と紫月の二人は、心惹かれ合っているけれど、それぞれ訳ありで……。

 作者様の書かれる女性は誰もがとても魅力的なのですが、紫月もまた、誰もが好きになってしまうような素敵な女の子です。
 外見も内面も、この世界ならではのファッションもかわいい!

 心情描写がこまやかなところも大好きポイントです。

 反乱が起きたりなど、これから物語が大きくうねる中、二人がどう成長し、恋をするのか。
 しっかり追いかけていきたいです!