《自己》とは内側にあるのか、それとも外側にあるのか

美容室にいく度に職業を偽り、嘘を重ね続ける「僕」。ある時は消防士と名乗り、ある時は建築士だと騙る。そのうちに段々と《自分》というものが瓦解していき……

《自己》とは果たして何処にあるのか。胸のなかに産まれついて埋まっているものなのか、それとも頭のなかの思考が《自己》を象るのか。或いは「外側」に?
読み進めていくうちに胸がざわざわと騒ぎだし、想わず鏡を確かめたくなるような。それでいて読了感は、優しく、心地いい。それはひとえに作者様の巧みな描写と、御人柄ではないかと……思った次第です。

ほんとうに素敵な読書体験でした。
是非ともひとりでも多くの御方に読んでいただきたい、短編です。

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