なにを足せばいい? なにを引けばいい?

自分ってなんだろう。
そう言う疑問を抱くのは、多分ずっと幼い頃。そして、どういう理由かわからないけれど、いつの間にやら自分がなんなのかに決着をつけている。自分はこういう人間である、と思うようになっている。

でもそれって、本当に本当の自分?
誰によって解かれて、誰が与えた証明?

自己同一性=アイデンティティというのは、誰かが存在しなければ証明できない。外部からのアクセスありきのものだ。
そんなアイデンティティがもしも擬人化したならば、この作品の主人公のようになるのかも知れない。
大人になっても適当な決着を付けられない、迷ったままの自分。
救い難いと思う。けれど救われてほしいと思う。
主人公が救われるとき。それは同時に読者が救われるとき。私はそのように思う。

その他のおすすめレビュー

詩一さんの他のおすすめレビュー411