その警察官は、緑のたぬきが食べられない。

作者 薮坂

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★★★ Excellent!!!

災害が起きたとき警察・消防・自衛隊は一目散に現場に駆け付ける。その被災地は、当然かれらの地元であり、実は彼らの家族が被災している可能性が高い。
それでも、彼らは一目散に職場に駆け付ける。我が家に残した妻や子供のことを案じながら。連絡がつかない両親の無事を身を切るような思いで願いながら・・・・・・。
 これが、わが国の防災であり、それを支えているのはスーパーマンでもなんでもない。私たちと同じく平凡で温かい家族を持つ、一人の人間なのです。

★★★ Excellent!!!

職業と食べモノは、切っても切れない関係にある。
あたたかいカップ麺。タヌキとキツネ。
どっちもうまいが、この警官には食べられない理由が…。

味覚・嗅覚と記憶は密接につながっています。
あの日、あの時に食べた味は二度と再現できない。
だからこそ、貴重なのです。

記憶のなかの味を大事にするからこそ。
食べられないものがあります。

★★★ Excellent!!!

緑のたぬきはお湯を注いで作るもの。温かいのは当たり前です。
でも、この物語に出てくるのは他の「緑のたぬき」にはない特別な温かさを持った、「緑のたぬき」です。

なぜ、彼は緑のたぬきが好きなのに食べられないのか。
読み終えた時にはその理由に納得するとともに、心の中が自然と温まってきます。
心が温まるだけでは終わらない、物語の締め方も個人的にはお気に入りです。

食べ物の美味しさは、それ自体の味だけで決まるわけではなくて、想いや出来事も絡んでくる。

そんなことを思い出させてくれる、この世で一番の「緑のたぬき」のお話はいかがでしょうか。

★★★ Excellent!!!

大切だから、大好きだからと、いつもいつも触れていることが、必ずしもその“宝物”を守ることにはならない。
あの時のまま、そっとしておく。
だからこそ守られる“宝物”もある。

惨状の中でこそ、そこから這い上がろうとするもがきの中でこそ、ふいに降ってきた束の間の休息を埋めるその暖かさは、胃にだけでなく、心にも、じわりと染みてくる。

その追憶の中の宝物を、大事にしまっておくことの尊さを気づかせてくれる物語。

★★★ Excellent!!!

緑のたぬきが好きなのに食べない。アレルギーではないのになぜ。

そんな読者の疑問に応えるように、上司の過去がゆるやかに語られる。朗らかでありながら嚙みしめるように話す声。かつて見た光景を、臨場感たっぷりに浮かび上がらせていく。

あの日の記憶、そして警察官としての生きざまに魅せられてください。
お湯を注いでから読むと、ちょうどいい食べごろになります。

お腹と心を満たす、緑のたぬきの物語をご賞味あれ。

★★★ Excellent!!!

あの時のことを、忘れたくないから。

無情な現実に打ちのめされても、過酷でも、そこで折れるわけにはいかない、前に進まないと行けない時、何が原動力になるのか。

一つは、やっぱり食べること。
そして食べ物を誰かに分け与えることは、生きて、と伝えることだと思う。
それを聞いたら、多分もう投げ出せられない。

心細い時に食べる、あたたかいもの。お腹を空かせている人に、すぐに満たしてあげられるもの。
カップ麺の愛は、きっとそこにあります。