概要
体験は小説のスパイスなり
印刷工場で三十年以上働いて来た私は、ある日、占い師に手相をみてもらう。スリッターという機械の鋭利な刃先が手のひらを切り刻み、皮膚の傷に浸透した印刷機の塗料で自然と緑色になっている手。占い師は「迷わずこのまま道を進むべし。福来たる」と、まるでおみくじでも引いたかのような口振りで、緑色の手については三十分間何も語らなかった。孫娘は緑色のごわごわした私の手のひらを、いつからともなく「ヤツデちゃん」と呼ぶようになって、そんな私の小指を掴んで放さなくなっていた。
独立した短編小説が15話ほどあります。ブルーベリーの実一つひとつがやがて甘美なジャムにならんことを!
独立した短編小説が15話ほどあります。ブルーベリーの実一つひとつがやがて甘美なジャムにならんことを!