第13話 聖夜
一日一食の毎日が、この頃よく続いている。金属加工会社で非正規作業員として五年働いて来た真知子は、梅雨明けの七月半ば頃に突然解雇され、毎月の給与二ヶ月分だけをもらって退職させられてしまった。二十九歳になる真知子は独身で、これといった出会いもないままに、淡々と過ごして来たが、自分が描いたマイホームの夢からは、だんだん遠ざかっているような気がしてならなかった。
夏が過ぎ、秋が終わる頃になって、仕事探しの相談をしていた友達から「幼稚園でバイトしてみない?」と誘われ、真知子はすぐに快諾した。「明日菜の子供が通ってる幼稚園でしょ。でも、保育士の資格はないわよ」と言うと、「資格は要らないバイトなの」と言われ、早速、十一月下旬からその幼稚園で真知子はそのバイトをし始めた。『アナと雪の女王』に出て来る雪だるまのオラフの着ぐるみを被って園庭に突っ立っているだけの仕事で、クリスマス・イブまでの短い期間だった。
クリスマス・イブの当日、園児たちは真知子のオラフに近付いて遊んでくれたが、園児たち全員が親の迎えか送迎バスで家まで送られると、その日を最後に、一ヶ月分だけのバイト料をもらった。真知子は買物をして自宅のアパートに帰宅した。そこへ、明日菜から電話がかかって来た。「一人でイブするもんじゃないわよ。早くうちにいらっしゃい。おっきなケーキ買ってあるから、あなたの分もしっかり用意してあるのよ」と言われ、真知子は「うん、ありがと。すぐ行く」と笑顔で応えた。
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