連想推理探偵部⑫
数日後、探偵部の部員は慌ただしく学校を駆け回っていた。 といっても、思乃だけは部室で待機だ。 しかし、想太がやって来てそうも言っていられなくなった。
「思乃さんも捜してくださいよー!」
「仕方ないわねぇ。 たまちゃんを探してほしいという依頼だっけ? どこを捜し済み?」
解決した事件の資料の整理を一度止め、席を立ち上がろうとしたその時だった。
「思乃先輩! たまちゃんを見つけました!!」
猫を抱えているのは新しく入った女子部員である。
「って、どこで見つけたのよ!?」
「校門の上を歩いているところを捕まえました!!」
「それをここまで持ってきちゃったの・・・」
満点の笑顔に満足そうに敬礼する女子生徒。 しかし依頼主である少女に見せると、抱えている猫を見て首を横に振っていた。
「体は一色で統一しているって話しましたよ!!」
「そんなぁ・・・ッ!」
「また捜し直しね」
「はぁい・・・」
思乃と想太も校内へと出てたまちゃん捜しを始めた。
「にしても見つからなさ過ぎない? 校内に猫がいたらすぐに騒がれると思うんだけど」
「そうなんですよねぇ。 もし外に逃げていたとしたら、僕たちの活動の範囲外ですよね」
依頼者の教室へ行き窓から校庭を見る。 木が邪魔で猫らしき影は見当たらない。
「外にいるとしたら捜すのは困難なのよねぇ。 何かいい手はないかしら?」
「そもそも学校に猫を連れてきちゃ駄目でしょうよ・・・」
「それもそうなんだけど、探偵が泣き言を言っていたらおしまいよ?」
「じゃあ、これからどう捜せばいいんですか? 情報も何もないのに」
思乃はそれを聞き、思いついたように言った。
「こうなったらまだパズルのピースは足りていないけど、連想ゲームをするしかないわね!」
「はい?」
「まず依頼者は朝に教室へと向かった。 そこに荷物とたまちゃんを置いて吹奏楽の朝練習へ行ったと言っていたわね」
「はい」
「だったら教室から逃げ出すのが普通。 でもそしたら校内にいる生徒に猫が見つかると思うのよ」
「そうですね」
「でもその目撃情報が一切ない」
「廊下へ出ず窓から飛び出したとか?」
「確かにこんなに木が近くにあったら跳び移れそうね。 でもたまちゃんは高いところが苦手と言っていたわ」
「とすると・・・?」
そこで思乃は閃いた。
「・・・もしかしたら私たち、物凄く勘違いをしているのかもしれない」
「勘違い、ですか?」
「依頼者の方は『猫を捜して』と言っていたかしら?」
その言葉に想太は首を傾げる。
「? いえ、普通に『たまちゃんを捜して』と」
「そのたまちゃんが猫じゃなかったら?」
「えぇッ!?」
「たまちゃんと言ったら確かに猫が思い浮かぶ。 私たちはそれに縛られていたのよ!」
「となると、たまちゃんと言えば他に・・・」
「見つかったわ!!」
外を見ていると木の上に何か引っかかってるのを発見した。 二人は校庭へ行き見下ろしていた木まで向かう。
「これは僕の得意分野が活きそうですね!」
「取ってきてくれる?」
「はい!」
木登りをした想太が言った。
「見つかりました! たまちゃんです!!」
そう言って想太が掲げたのはアザラシのたまちゃんが描かれているイラストだった。 それを持って依頼主のもとへと戻った。
「それよ!! よく見つけたわね!?」
「木に引っかかっていました」
そのやり取りを見ていた他の部員が言う。
「えぇ!? たまちゃんってアザラシのことだったんですか!?」
依頼が解決したと聞き他の後輩もぞろぞろとやってくる。
「てっきり猫の方かと思っていました・・・」
「私もです・・・」
困惑している後輩に思乃は言った。
「固定観念は探偵には不要ということね」
あれ以来探偵部は一躍有名となり、後輩の中から興味を引いてくれた人が入部して恵まれた部活になったのだ。
-END-
連想推理探偵部 ゆーり。 @koigokoro
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