連想推理探偵部⑩




一ノ瀬から事情を聞き、今後の行動方針は決まった。 一ノ瀬が嘘をついている可能性も否定はできないが、それの精査はあくまでその後になる。


「教えてくれてありがとうございます! 六限目を終えたら早速美鈴さんのもとへ向かいましょう!!」


一ノ瀬とはあまり一緒にいるところを人に見られたくないということで、一人送り出し思乃は想太に指示を出すことにした。


「でもその前に想太にはやってもらいたいことがあるわ」

「やってもらいたいこと、ですか? ・・・もしかしてストーカーの件について反省文を書けとか!?」

「そういうのじゃないわよ」

「じゃあ、何の反省文を書けばいいんですか?」

「ちょっと一度反省文から離れましょう。 そんなに反省したいのなら絶望的な写真写りにでも反省していなさい」

「あれは癖みたいなものなんです・・・」


一ノ瀬からは美鈴の居場所だけを聞いた。 何故それを一ノ瀬が知っているのかまでは尋ねなかった。 自分で解決したかったのもあるし、既に見当が付いていたからだ。


「これは連想ゲームよ」

「連想・・・?」


想太にある頼み事をした後、思乃は一人体育館へと向かおうとした。


「ちょっと、思乃さん!? 今から向かうんですか?」

「当たり前でしょう?」

「でももう六限目が始まってしまいますよ!!」

「授業よりも依頼の方が優先! 朝から閉じ込められているとしたら、そろそろ大変なことになっているはずよ」

「大変なこと・・・? そ、そうか! トイレか・・・ッ!」

「ピンポン!!」


―――一ノ瀬さんの苗字を聞いた時から違和感を感じていた。

―――一ノ瀬さんは確かに見る顔だったけど、同じクラスにはなったことがないし名前までは分からなかったのよね。

―――おそらく私の推理が合っていればもうすぐに解決するはず。

―――・・・でも美鈴さんがターゲットになった理由が分からない。

―――私の知らないところで何かあった可能性はあるかもしれないけど。

―――もしそうじゃないなら何故彼女を・・・?


想太にある調べものをさせ思乃はその間に体育館へと着いた。 体育の授業は外で行われており体育館はがら空き状態だ。 そこで念のため人の目がないかを確認し、体育館倉庫の扉を開ける。


「美鈴さん? いるー?」

「んーッ!」


奥の方からこもったような声が聞こえた。


「ここ・・・?」


高く積み上げられたマットを上ると微かに動いている影を発見した。 跳び箱の一段目をどけると中には一人の女子生徒が縮こまった状態で閉じ込められていた。


「見つけた・・・! まだ貴女の強固な堤防は決壊していなかったようね。 大丈夫?」


口元に貼ってあるガムテープや手足に巻かれているロープを外してあげた。


「ありがとうございます・・・」


幸い外傷もなくやつれてはいるが、動けないということもなさそうだ。


―――跳び箱が倒れないよう左右にマットが置かれ、呼吸ができるようにか少しだけ隙間が開けてある。

―――監禁した側も美鈴さんに大事が起きないようには考えていたようね・・・。

―――最もここで盛大に水たまりを作ってしまっていたら、女として大変なことになっていたのかもしれないけど。


「あの、どうしてここにいると分かったんですか・・・?」

「ある人から探偵部に依頼が届いたのよ」

「探偵部? ある人・・・? それより、私もう・・・」


その時体育館に大きな声が響き渡った。


「美鈴!? 見つかったの!?」


相原だ。 相原は体育館倉庫へ顔を出し、美鈴の姿を見ると嬉しそうに抱き着いた。 どうやら授業を飛び出してきたようだ。


「美鈴! 無事だったのね!! よかったぁ・・・!」

「・・・喜んでいる最中に申し訳ないんだけど」

「?」


二人の中に思乃は割って入り相原に尋ねた。


「まさか美鈴さん捜しの依頼人の貴女がこの事件の犯人だったなんてね」



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