連想推理探偵部⑨
普段あまり大声を上げない想太なだけに、思乃は本当に事情があったのだと理解した。
「・・・分かったわ。 なら事情を聞こうじゃない」
「ありがとうございます。 でもその前に少しいいですか?」
想太は部室から廊下を覗き何かを確認し始めた。 おそらくは聞かれたらマズい話をしようとしているのだ。
「一ノ瀬さんに聞かれると流石にマズいということ?」
「違いますよ。 相原さんが近くにいないかを確認しているんです」
「一ノ瀬さんじゃなくて相原さん? どういうことなの?」
想太は部室へ戻ると早速話してくれた。
「単刀直入に言います。 一ノ瀬さんが『これは相原さんのせいだ。 私のせいじゃない』と言っているのを聞いたんです」
「・・・え?」
「だから相原さんと一ノ瀬さんに何か接点があるんだと思い、午前中は相原さんの目を盗んで一ノ瀬さんの尾行をしていました」
「・・・私にも言わずにね」
「何か確証があったわけではないですから。 でも探偵の基本は尾行からって、思乃さんも教えてくれましたよね?」
その言葉に咄嗟に指を立てて返す。
「そ、その通りよ! やはり私の目に狂いはなかったわね!!」
「え? さっき滅茶苦茶追い詰めてきていませんでした!?」
「スパルタ教育よ!! とりあえず一ノ瀬さんには後で謝ればいいわ。 いや、あの様子だとその必要もないのかも・・・」
「え? 何か言いました?」
「いえ、何でもないわ。 ちなみに一ノ瀬さんを尾行して楽しかった?」
「そんなわけないじゃないですか。 あの子、僕のことを写真に撮ろうとしたんですから」
「その写真見たわよ」
「えぇ・・・!? 思乃さんに変なもの見せないでほしいですよ、本当・・・」
どうやら一ノ瀬が勘違いしたように両想いというわけではなかったらしい。 想太の行動全てに納得したわけではないが、一応理解はできた。
「それで、一ノ瀬さんを尾行して何か掴めたの?」
「いや、それが何も・・・。 しかも午後になってうちに依頼に来たりして、調査はとん挫ですよ。
流石に思乃さんが監視している一ノ瀬さんを尾行するわけにはいかなかったし、もし何かあれば思乃さんが気付くと思ったんです」
「・・・もしかして、私に言わなかったのって一ノ瀬さんがボロを出すのを狙って?」
「実はそれもあります。 思乃さんのことだから大丈夫でしょうけど、怪しんでいる気持ちがあるとそれが伝わるとも限りませんからね」
「ふぅん・・・」
二人きりの部活。 それなりに熱心に活動してきて、想太はその性格的にのんびりしていると思っていたところ、意外と考えていたことに驚いていた。
「まぁ、いいわ。 それより早く美鈴さんを捜しましょう。 もうすぐ放課後になってしまうから」
「そうですね」
「これだけ捜しても見つからないって、先生たちの無能さが学校外にバレたら一大事よ」
「あれ、そういう趣旨でしたっけ? 学校にいるのかも分からないのに先生たちに責任がいくのは可哀そうですね」
「まぁ、それが公務員の役割というものだから。 税金を美鈴さんが払っていたのなら助けてもらえる権利はちゃんとあるけどね」
「消費税くらいしか払っていないと思いますけど」
「じゃあ美鈴さんが浪費家であることを願いましょう! でも確かに先生たちに学校外のことまで面倒見てもらうのは酷ね。 先生たちも税金はしっかり納めているでしょうから」
「・・・ちょっと、税金の話から離れません? というか、まず依頼を受けた僕たちに一定の責任がかかってくるのでは・・・?」
「お金を取っていないからかからないわよぉ。 気楽にやんなさいって!」
そう言いながら思乃は手をパタパタとしながら笑う。
「えぇ・・・。 人一人いなくなっているのに無責任な」
「さて、とりあえず一ノ瀬さんに直接聞きにいくかしらね」
「思乃さん・・・」
冗談っぽく言っていたが、足早に移動しているのを見ると思乃はやはり真面目に人命救助を考えているのだと想太は思った。
「でも答えてくれますかね・・・」
「『これは相原さんのせいだ。 私のせいじゃない』 この言葉は心が怯えているから出た言葉よ。 何か相原さんに脅されていたんでしょう」
そうして二人は一ノ瀬のもとへと向かった。 廊下から一ノ瀬にアピールし適当に理由を付けて廊下へと出てもらった。 目に付かない階段へと移動する。 相原が近くにいないことも確認済みだ。
「・・・あの、一ノ瀬さん。 先程は怖い思いをさせてすみませんでした」
「あ、はい・・・」
一ノ瀬は顔を赤らめている。 その理由を想太は知らない。 それに一ノ瀬は事件のことについて聞かれるとは思っていないようであった。
「でも一ノ瀬さんを尾行していたことには意味があったんです。 ・・・相原さんと一ノ瀬さんは繋がっていますね?」
「ッ・・・。 相原さんとはどなたですか? 私知りません」
答えようとしない一ノ瀬に想太は思乃を見た。 ここからは思乃が代わって言う。
「もし相原さんに何かを言われて脅されているのなら言ってちょうだい。 私は貴女の味方よ? さっきストーカーの件を解決したわよね」
「・・・ッ」
「もし私たちに話して一ノ瀬さんが狙われるようなことがあるのなら、その時は私たちが責任を持って一ノ瀬さんを守るから」
震える一ノ瀬の手を握り締めた。
「・・・大丈夫よ」
顔を上げた一ノ瀬の瞳は明らかに潤んでいて、今にも消え入りそうな表情をしていた。
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