第15話 冒険者ギルド

前回のあらすじ


儀式は事務的


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教会を後にした僕達は冒険者ギルドを目指す。


「それにしても、カイセル兄様が冒険者をすることを許してくれるとは思ってなかったよ。」


「そうか?。オレはなんの心配もしてなかったけどな。」


この世界では、ステイタスを授かると冒険者になることができる。冒険者は街の外に出て採取を行ったり、魔物の討伐をしたりするので、危険が多い。そのため、ステイタスを授かることが条件となっている。


「なんでそう思ったの?」


「んー。教えてやらねー。」


「なんで教えてくれないの!」


そうして歩いていると、だんだんと人通りが多くなってきた。


「ハクト、もうすぐ着くぞ。」


冒険者ギルドは王都の中でも、もっとも栄えた場所にある。というのも、冒険者達は命の危険を冒して仕事をしているので、道具や娯楽に対してお金を惜しまない。その結果、冒険者を相手とした商売をする店が冒険者ギルドの周りに増え、自然と栄えていったそうだ。


僕とユラは人混みを縫うように進んでいく。すると、前方に一際大きな木造の建物が見えてきた。


「あれが冒険者ギルドだ。」


盾の前で剣を交差させたデザインの看板を掲げるその建物は、周りの建物より年季の入った印象を与える。


僕とユラは並んで冒険者ギルドに入っていく。冒険者ギルドの中には酒場が併設されていて、昼間だと言うのに頬を赤らめて騒いでいる人達で溢れていた。進ちらちらと視線を受けるので辺りを見渡すと、ユラに気付いた冒険者達が驚いて見ているようだ。中には声をかけようか悩む素振りを見せる人達もいる。


受付の近くまで来たところでユラに声をかけられる。


「ハクトはここでしばらく待っていてくれ。ギルドの中だから大丈夫だとは思うが、一応気をつけるんだぞ。」


「はーい。」


そう言ってユラは受付に一言告げ、奥にある階段を登っていく。


待っていろと言われたが何もせずに待つのも暇なので、少しギルドの中を見て回る。ギルド内には、獣人やエルフと思われる人など様々な種族がいた。人族の人と楽しそうに話していたりして、完全に溶け込んでいる。


「おい、坊主。ここはお子様が遊びに来るような場所じゃねぇぞ。」


ユラと別れた場所に戻ろうとしたところで、頬に傷のある大柄な男に話しかけられる。頬は赤くなっており、どうやら酔っ払いに絡まれてしまったようだ。ユラに気をつけるよう言われたので、僕は問題を起こさないように丁寧な対応を心掛ける。


「ご忠告ありがとうございます。実は今日は冒険者登録に来たんです。」


「ほう。お前のような坊ちゃんが冒険者になるだと?この職業も舐められたもんだな。」


そう言うと男は自分の頬を指さし、


「この傷が見えねぇか?。ここはそんなに甘い世界じゃねぇんだよ。坊ちゃんは帰ってママのお手伝いでもしてな。」


この男は僕のなにを知っていてそんなことを言っているのだろうか。優しさなのかプライドなのか分からないが、どちらにせよ僕は少しムカついてしまった。


「立派な傷ですね!。僕は鍛えていて、そんな傷を負うことが出来なさそうなので羨ましいです!。」


僕は意識して、棘のある受け答えをする。すると、男は額に青筋を浮かべて


「そうかそうか。なら俺が今、この場で、お前のその綺麗な顔に、一生消えない傷を残しておいてやるよ!」


そう言って男は拳を固め、殴りかかってくる。威張っていた割に、大したことのない動きだ。


(あまりにも遅い。よくこんなお粗末な実力で威張れるよ。)


僕はそれを難なく躱す。避けられると思っていなかったのか、空振りした男はバランスを崩して危うく転びそうになり、床に手を着く。


「僕の綺麗な顔はそんな低いところには無いですよ。」


僕は努めて笑顔を心掛ける。突然殴りかかって来た男に自分でも気付かない内に、相当頭に来ているようだ。


「てめぇ!!!!!もう容赦しねぇぞ!!」


男はまた殴りかかってくる。先程よりも多少マシだが、それでもお粗末なことに変わりはない。僕は男の拳を躱し、懐に入り込む。

そのまま男の腕を掴み、背負い投げの要領で投げ飛ばす。


…バァァァン!!!!!


男が床に叩きつけられた音がギルド内に響き渡る。喧騒に溢れていたギルドが静寂に包まれる。傍から見れば、明らかに子供な僕が大柄な男を見下ろしているという異質な光景だ。僕と男のやり取りを終始見ていた人達は、驚きに言葉を失っているようだ。


「ローガスが子供にやられたぞ.....」


誰かがポツリと言った一言に、その場にいた人達が息を飲んだのが分かる。それなりに名の知れた冒険者だったのだろうか。


「おいおい、さっきの音はなんだ。」


階段の奥から、黒髪に白髪混じりのガタイのいいおじさんが出てくる。横にはユラもおり、僕の置かれた状況を見て額に手を当てている。


ユラに気をつけるよう言われたのに、結局問題を起こしてしまった。


(これはもしかしてまずいことになったかな?)


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