第11話 ユラの実力
前回のあらすじ
ユラに馬鹿にされた
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交流会からしばらく経ったある日、僕は変わらずユラとの剣術の稽古に励んでいた。
「そういえばユラって冒険者なんだよね?。依頼とか受けないの?」
「何言ってんだ。今まさに依頼をこなしてるじゃねぇか。」
そういえばカイセル兄様からの依頼だって言ってたな。一年以上も前のことだからすっかり忘れていた。
「でもユラってSランク冒険者なんだよね?。強い魔物とか出たら依頼を受けなきゃいけないんじゃないの?」
「そんなこともないぞ。王都にはオレ以外にも、強い冒険者はいるからな。さすがに、国王からの指名依頼の妨げにならないようギルドも配慮してるんだろ。」
「そうなんだ...」
そう言われるとなんとなく罪悪感が湧いてくる。Sランク冒険者まで登りつめるくらいだから、ユラの性格上、冒険者としての活動を楽しんでいたのだろう。その時間を僕が奪ってしまっていないか不安になる。
「ユラは僕との稽古より、冒険をしたいと思わない?」
それを聞いた、ユラは目を丸くする。そして肩をすくめると、呆れたように話し出した。
「なんだぁ?気ぃ使ってんのか?。言っておくが、オレは好きでやってるんだぞ。初めに言っただろ?、断ることも出来るって。お前が気に入ったから教えたくなったんだよ。」
そう言ってユラは、僕の頭に乱暴に手を置く。
「安心しろよ、ハクト。オレは自分の意思でお前のそばにいる。」
なかなか嬉しいことを言ってくれる。危うく泣いちゃいそうになったけど、なんだか悔しいのでグッと堪え、話題を変えることにする。
「ユラが今まで戦った中で1番強かった魔物ってなんなの?」
「そうだなぁ。1番だと、ドラゴンゾンビっていう魔物だな。知ってるか?」
「知ってるもなにも、ここ数年で1番話題になってた魔物じゃん!」
2年以上前に王都近郊の森の中に突如現れ、災害認定された魔物だ。冒険者によって討伐されたと聞いたが、それがユラだったとは。
「あれは厄介だったな。でかい体で暴れ回るし、死んでるくせにしぶといし、腐ってもドラゴンだから身体機能も魔法も桁外れだ。しかもドラゴンゾンビとまともに戦える冒険者なんてそうそういねぇからな。オレを含めて4人で討伐したんだ。あれは大変だったぜ。」
どうやらユラは本当に凄い冒険者だったようだ。
「ユラって本当に凄かったんだね。」
「Sランク冒険者って言ってたろ。信じてなかったのか?」
「いや、そうじゃないけどさ。普段のユラからは想像できないからさ。」
僕が正直な感想を伝えると、ユラは腕を組んで、考え込み始めた。
「うーん。そういや実際にオレの実力を見せたことはなかったな。」
しばらくそうしていたユラは、
「ハクト、組手でもしてみるか?」
「うん!やりたい!」
もちろん僕は即答する。Sランク冒険者と組手をできる機会なんてこの先もそうそうないだろう。そんなチャンスを無駄にするなんてもったいない!
ユラは驚くこともなく、口角をあげた。
「お前ならそういうと思ったぜ。それじゃあやってみるか。」
僕とユラは少し距離をとり、木剣をもって向かい合う。少し緊張している僕に、ユラは声をかけてくる。
「先手は譲ってやる!いつでもかかってきていいぞ!」
それを聞いて僕は集中力を高めていく。これまでの稽古で学んだこと、培ったものを思い返す。
「行きます!」
そして僕は駆け出す。程よく力の抜けた体勢から一気に加速する。ユラの目前まで迫ったところで剣を振り上げ、袈裟斬りにするように振り下ろす。Lv2まで上がっている剣術スキルが僕の動きにキレを与えてくれる。今の僕にできる渾身の一撃。しかし、簡単に受け止められてしまい、鍔迫り合いの形になる。
「おいおい、驚いたぞ。お前本当に7歳か?」
「今のは良かったと思ったんだけどね!!!簡単に受け止めてくれる。」
「まぁ、元はオレの実力を見せるのが目的だからな。簡単にはやられてやんねぇぞ!」
ユラの払った剣に、僕は飛ばされてしまう。
それでも僕は斬りかかっていく。今度は威力ではなく、手数を意識する。右へ左へと剣を振るう。しかしその全てをユラは受けきる。その場から1歩も動くことなく。
「そろそろオレからも行かせてもらう!!!」
そう言ってユラは僕に斬りかかってくる。それを僕はなんとか受けていく。体中から汗が流れる。それに対してユラは息一つ切らしていない。しばらくそれが続いたあと、僕はたまらず距離をとる。
「どうだ?。今のでだいたいオレの実力は分かったんじゃないか?」
本当に強い。今、僕がギリギリで受けきれていた事が何よりの証拠だ。僕が斬りかかっていった際の短い間に、僕の力を正確に把握。そして僕が反応できるギリギリの速度での攻撃。相当に高い実力がないと難しいのではないだろうか。
(このまま終わっちゃうのは、もったいないよね。)
僕は魔力を全身に纏っていく。
(人前で使うのは初めてだけど、恐らくユラには気付かれるだろうな。)
そうして、僕は身体強化をかけ終える。
「お前、それは...」
ユラが目を見開いて驚いている。過去に一度、僕の放出した魔力を感知した侍女が、僕の部屋に賊が潜んでいると騒いだことがあった。それ以来は人前で魔力を使うことは控えていたのだが、
「今の僕にできる全力で行くよ!ユラ!」
さぁ、第二ラウンドだ...!!!
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