第16話 事情の説明
前回のあらすじ
大男に絡まれたので投げ飛ばした
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「おいおい、さっきの音はなんだ。」
黒髪に白髪まじりのおじさんがユラを伴い、こちらに向かってくる。
(問題を起こさないように言われたのに...)
僕はユラと別れる前にした約束のことを思い、うなだれる。
「君がこの騒ぎを起こしたのかい?」
やって来たおじさんに質問されるが、どう答えようか悩む。現時点で、部外者である僕が言ったことを信じてもらえるだろうか。ましてや子供の見た目をした僕が、大男を投げ飛ばすなんて、僕なら信じない。
「違います!そこで倒れてる男の人が、その子にいちゃもんつけて絡んでたんです!」
僕が答えに迷っていると桃色の髪をした女の子が声を上げる。見たところ、僕とそれほど歳の変わらないように見えるが、おじさんに対してハキハキと喋れている。
「ふむ。今の説明に間違いはないかい?」
女の子の発言を受けておじさんが僕に尋ねてくる。
「はい。僕がギルド内を見学していたところ、場違いだと絡まれました。対応したところ襲い掛かって来たので、自衛のために投げ飛ばしました。」
僕が挑発したせいもあるんだけど黙っておいた。ムカついてたし。言ってることは本当だからね!
「そうか。それにしても子供がローガスを投げ飛ばすか...」
おじさんはチラッとユラに視線をやる。ユラは意に介さず、飄々としている。
「はぁ...、まぁいい。おい!起きろローガス!。いつまでギルドの床で寝てやがる!」
おじさんはローガスと呼ばれる男の頬を叩き、意識を呼び覚まそうとする。どうやら投げ飛ばした衝撃で気を失っているようだ。
「...ッ!!あれ?俺は...。」
おじさんに起こされローガスは目を覚ました。
「って、サブマス!。なんであんたがここに!?。」
サブマスと呼ばれたおじさんを見たローガスは、相当驚いているようだ。
「用があって下に降りてきてみたら、お前が寝てやがるから起こしてたとこだ!」
僕に事情を聞く時とは違い、強い語気でローガスに事情を話す。結構怒ってるのかな?
「そうだ...。俺は...。」
ローガスは辺りを見回し、僕を見つけるとキッと睨みつけてくる。
「てめぇ!舐めたマネしてくれやがって!」
そう言ってまた距離を詰めてくる。この状況でまた襲いかかろうとするなんて相当プライドが高いのかな?。それとも余程の馬鹿なのか。
「おいローガス!いい加減にしやがれ!。そいつは俺の客だ!。手出ししたら容赦はしねぇぞ!」
おじさんから威圧感が溢れる。なかなか凄い威圧感で、周りにいる人達は汗を垂れ流してる。ユラに比べると数段劣るので、僕は割と平気だ。
「ヒッ...。あ...あぁ、すまねぇ。少し熱くなってたみたいだ。」
そう言うとローガスはギルドを出ていこうと出口に向かって歩いていたが、去り際に再度睨まれた。これはまた一悶着ありそうだ。
「すまないね、うちの冒険者が迷惑をかけて。私はこのギルドのサブマスターをしているリガーテという。君がハクトで間違いないか?」
「はい。僕がハクトで間違いありません。こちらこそ騒ぎを起こしてすいませんでした。」
リガーテさんからの謝罪と挨拶を受け、僕も挨拶を返す。どうやら普段は礼儀正しい人のようだ。
「それじゃあ上の階にある、応接室へ行こうか。そこで話をしよう。」
そう言ってリガーテさんは踵を返し、階段の方へ向かう。
「ユラ、君もついてきてくれ。」
ユラはそれに頷き歩き出す。僕もそれについていくように歩き出す。それを皮切りにギルドは先程までの様子を取り戻していく。歩いている僕の横に並んだユラに話しかけられる。
「ハクトお前なぁ。ちゃんと約束したじゃねぇか。」
「ごめん!色んな人がいて気になっちゃって。」
「はぁ...まぁ起きちまったもんはしょうがねぇが...。あのローガスってやつたぶん根に持ってるぞ。」
「そうだよねぇ。今になってちょっとやっちゃったと思ってる。」
それを聞いたユラはやれやれと言った感じで
「まぁ、あの程度のやつならハクトは負けねぇだろうが。それかいっそ王族ってバラしちまうか?」
ユラがイタズラを思いついたようにニヤニヤしながら言ってくる。
「だめだよ!カイセル兄様と約束したんだから!」
冒険者になる許可を貰った際に、いくつか条件を出された。その中に身分を明かさないというものがある。
「ハッハッハ。冗談だよ。そんなに必死になるなんてハクトは真面目だなぁ。」
僕をからかってくるユラに、ローガス以上にイラッとしたのはここだけの話だ。
実力を隠すなんてもったいない!〜チート転生した僕は異世界を自由に生きていく〜 数算 @asdghjkl
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