第6話 第一印象って大事だよね
前回のあらすじ
チャラ男が現れた!
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「あんたがハクトか?」
男は僕に向かって、探るような視線を向けてくる。僕の後ろでは、般若を纏ったイザミナが男に詰めよろうとしていた。
「貴様!王族に対して、なんて無礼な……」
「はい。私がハクトです。あなたが私の剣術の講師の方で間違いないですか?」
「ハクト様!このような礼節も弁えぬ男にそのような……」
「イザミナ。少し静かにしてくれる?。」
「……はい。申し訳ありません。」
僕は食い下がろうとするイザミナを有無を言わさず控えさせる。未熟な僕にでも分かる。この男は相当に強い。もし機嫌を損ねて帰られたりでもしたら、もったいないと思えるほどに。
「ハッハッハ!いいねぇ。悪くない気迫だ。それに、初対面のオレに対して高圧的でないのも高評価だ。」
そうして男は新しいおもちゃを与えられた子供のような笑みを浮かべる。イザミナは僕の後ろで震えている。湧き上がる怒りをこらえてくれているようだ。
「侍女ちゃんには悪いが、オレは態度を改めるつもりはないぜ。ハクトもそれでいいよな?」
「はい。もちろんで……」
「貴様!1度ならず2度までも!。ハクト様のお名前を呼び捨てるなど、万死に値する!。貴様など必要ない!。ハクト様には私がご指導させていただ...」
イザミナが男に向かって詰めよろうとする。それを見た僕が、咄嗟に止めに入ろうとしたその瞬間、男から押し潰されるような圧力が放たれる。
「「………!!」」
「言っておくがオレは、国王陛下直々に依頼を受けている。弟を鍛えてやってくれと。そしてオレはその依頼を受けた。」
依然、男からの圧力は止まない。
「つまり、オレには国王陛下が認めてくださった実力がある。そして国王陛下には、気に入らなかったら断ってくれて構わないと言われている。」
僕とイザミナは男の圧力にあてられて、言葉を発することが出来ない。
「でもオレは、ハクトを気に入り始めてんだ。依頼を受けてもいいと思えるほどに。だからオレに国王陛下の期待を裏切らせないでくれ。」
そこまで言うと、押し潰されるような圧力がフッとなくなった。イザミナは力が抜けたのか、ヘタリと崩れて座り込んでしまう。
「侍女ちゃんもなかなかやるみたいだが、この程度でヘタってるようじゃまだまだだな。」
実際、イザミナは僕の護衛も兼ねているため決して弱くない。そこらのゴロツキなど、何人いても1人で相手にできる実力がある。
「それに比べてハクトは……」
男に真っ直ぐと見据えられる。僕は圧力から解放された後も動けないでいた。だが、決して膝をつくことはなく、両の足で地を押し返している。イザミナは僕の後ろで震えている。
「その歳でオレの圧力を受けて立っているか...。ハッ!いいねぇ!。ますます気に入った。お前は俺が責任を持って最強にしてやるよ!。」
「ありがとうごさいます。」
男はうんうんと頷いている。僕はホッとする気持ちを表に出さないよう、努めて堂々と振る舞う。それにしても最強とは、ずいぶんと大きく出たな。
「それじゃあ自己紹介するぜ。俺の名前はユラ。普段は冒険者をしている。気軽にユラと呼んでくれ。これからよろしく頼むぜ!ハクト!。」
それを聞いたイザミナは目を見開き、驚いている。そんなに有名な人なのかな?
「イザミナ。ユラを知っているの?」
そう尋ねると、未だに座り込んだままのイザミナは重々しく口を開く。
「私の記憶に誤りがなければ、その男はこの国で唯一、ソロでSランクに登り詰めた『陽炎』の二つ名を持つ冒険者です。」
わぁーお。思ってたより大物だった。やっぱりとんでもなく強いみたいだね。鑑定したら怒られるかな?
「僕はハクト・キングス・ルーベスト・リンガルと言います。後ろに控えている侍女はイザミナです。僕のことも気軽にハクトって呼んでください。これからよろしくお願いします!」
「うんうん。いいね。それじゃあ早速稽古に入るか。」
来た!。やっぱりせっかく異世界に生まれたんだから、とことん強くなりたいよね!。Sランク冒険者の訓練には期待が高まるよ。
「と言っても、ハクトは6歳になったばかりで、まだまだ体ができてねぇ。10歳になってステイタスを授かればスキルを覚えられるようになるんだが、それもまだできねぇ。だから今日はこれからについての話をすることにする。」
ん?ステイタス授からないとスキルって使えないの?。僕はスキル使えるんだけど...。ひょっとして結構おかしいことしちゃってた?。
「聞いてるかもしれねぇが、俺は基本的に月・火・木・土の曜日にお前に指導することになってる。それから、俺が教えることだが...」
それからは最初の1年のうちは体を作るためにトレーニングすること。それが終わり次第、実践的な訓練を受けられることを言われた。しかし1年か。僕はいち早く強くなりたいのに。
そうだ!
「体作りは稽古以外も時間を使って自主的に行います。なので、なるべく早く訓練を受けられるように出来ませんか?」
「なんでだ?」
「だって」
「うん?」
「時間がもったいないじゃないですか!」
それを聞いたユラは驚きに身を固め、イザミナは頭を振り、僕はキラキラした瞳でユラを見ていた。
しばらくして、
「お前、本当におもしろいなぁ。」
ん?なんかおかしなこと言ったかな?
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