青年は謎の少女を救えるか―王道ファンタジー小説ここにあり

大聖堂騎士団に所属する青年タオと親友エリュースが、森に隠れるように生きる不思議な少女と出会うところからこの物語は始まります。

少女の正体と、彼女を取り巻く者たちの思惑が交錯する中、真っ直ぐに友情を育む青年達に心を打たれました。対峙するものがどんなに大きな力であろうとも、カイを守る為なら迷わずに行動する彼らに全力でエールを送りたくなります。

ここまでのめり込めるのは、圧倒的な筆力によって背景の世界や人物像が表現されているからでしょう。美しい街並み、妖精達の森。その世界でしっかりと営みを続けている人々とその心。怪しく交錯する思惑。この世界で展開される物語は、さながら壮大な映画のようです。中世ヨーロッパの世界観をここまで色鮮やかに描いている作品にはなかなか出会えないのではないでしょうか。

重厚で、どこか物悲しさを漂わせる、これぞ王道のファンタジー小説。本物を読みたいと願う方におすすめです。

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