第17話
「お父様。今、よろしいでしょうか?」
「カーナ、どうしたんだい?」
「アインス様の事ですわ。王城では何があったのですか?私が城で看病していた時は静かでしたが、邸に帰り私の部屋に入ってからは子供のように涙しておりましたわ。相当心に傷を負っているのだと思われるのです」
カーナの父は息を一つ吐いて答える。
「レイナ妃だよ、原因は。陛下から聞いた話だが、レイナ妃は婚姻当初から王城にいない側妃達に嫉妬し、離縁しろ、側妃に出来た子は王子として認めないと迫っていたそうだ。
そこから独占欲は少しずつ酷くなり、執務室へ入ってきては文官に口を出し、侍女を遠ざけたり、舞踏会では話しかけてきた令嬢にワインを掛けたりと明らかに可笑しな振る舞いが目立つようになったようだ。
アインス殿下に毎日閨を求め、拒むと物を投げたりして騒ぐ。薬を飲食物や飲み物に混ぜて事に及んでいたらしい。子が出来た時は少し治ったらしいが、子が産まれるとすぐに閨を再開させたらしい。
もちろん子は乳母に預けっぱなしなのだとか。殿下は精神的にも肉体的にも衰弱していったみたいだ。
今回陛下から跡継ぎの王子2人目も産まれた事でゆっくり療養させるように指示が出たのだ」
「そうだったのですね。私が城に着いた時、彼は痩せ細り衰弱しきっておりました。やはり体調が戻るには時間がかかります。
私は、アインス様を支えていきますわ。先程ハルトもアインス様と会いました。アインス様は我が子を見て嬉しいと喜んで下さいましたわ。レイナ様はアインス様を衰弱させてまでどうしたかったのでしょうね」
「さぁな。行き過ぎた嫉妬なのかもな。王妃教育を幼少期よりしっかりと受けたはずなのだがなぁ」
父はそれ以上何も言わなかった。
私は父にアインス様の様子を伝えた後、部屋に戻る。まだ眠っているが悪夢を見ているのかうなされている様子。
私はそっとベッドの横に座り、アインス様の頬や頭を撫でると穏やかな寝息に変わった。城はどんなに辛かったのでしょう。あの時はそれが最善だと思ったの。
アインス様の事なんて好きでもなかったの。
いつのまにか絆されてしまったのね私。
私はアインス様の横で仕事を始め、夕食も今日ばかりは部屋で取ることにした。アインス様には私がよく過去に食べていた社畜推奨野菜スープをレシピにして料理長に作って貰ったの。
滋養のある物を少しずつ摂っていかないとね。
「アインス様、起きて下さいな。夕食を持ってきましたわ」
私の声に目を覚ましたみたい。
「カーナ、俺に食べさせて欲しいな」
「ふふふっ。アインス様、今だけですわよ?このスープは私が昔よく作って飲んでいた滋養スープですの。早く良くなって下さいな」
私は一口ずつスープをアインス様の口に運ぶ。
「本当?とても美味しい。身体に染み渡るようなスープだ。本当に美味しい」
食事を終えるとアインス様は従者にお願いして湯浴みをする。私もマリアナに用意してもらい湯浴みをする。湯浴みを終えて部屋に戻るとハルトがベッドの上で待っていた。
「おかーさま、寝る前にご本を読んで欲しいです」
アインス様も部屋へ帰ってきてハルトの隣に座る。私はハルトを真ん中にハルトのお気に入りの本を読む。読み終わる頃にはアインス様に寄り掛かりウトウトしている。従者にお願いしてハルトを部屋に連れて行って貰った。
ここからは私達の時間。アインス様とベッドへ入り身体を寄せ合う。
「カーナ。夢のようだ。温かい」
2人だけのゆったり流れているこの時間を幸せだと思う。
こうして数日は2人で過ごしてから、日中はハルトと一緒に過ごす時間も増やしていった。ハルトはアインスにとても懐き、アインスも自分そっくりなハルトを目に入れても痛くないほど可愛がっている。それと同時にアインスの体調もみるみる回復していき、食事も家族で摂れるまでになった。
父と元気になってきたアインスは最近よく執務室で話をしている様子。城の様子を聞いているのだと思う。
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