第8話

そんな感じで1年が忙しく過ぎて行った。


 マイア様の領地は道路整備と識字率を上げる事や街のインフラ整備を優先させたみたい。お互い育てた技術者を交換派遣して伸ばしていこうねと今日もお茶をしながら話していたの。


マイア様の目標は隣国との貿易らしい。その為に特産品を作り出したいのだとか。アグレッシブだといつも思うわ。


 マイア様のお父様とお兄様は最初は領地改革に苦い顔をしていたらしいのだけど、インフラ整備や識字率が上がった事で領民内のトラブルが減り始め、街も悪臭が無くなり治安も良くなってきたと今は大手を振って喜んでくれているらしいわ。


収益にはまだ繋がっては無いから今は踏ん張り所よね。


反対に私は収益を優先したから少しずつ街のインフラにも投資していきたいわ。夢は広がる一方ね。


インフラ整備に乗り出すのは転生者あるあるではないかしら?




「カーナ様、聞かれました?半年前にナリスタ様が病死しましたわよね?意識の無い状態が続いていた時に元婚約者のレイナ様が王城へ呼ばれ、今月ようやく婚姻して正妃となったという発表を」


そう言ってニコニコとお茶を飲みながら話すマイア様。お茶会は月一の恒例行事となっている。


 領地を跨ぐ道路はまだ完成していないのだけれど、途中までは快適に行き来出来るようになったので半日で相手の家に着く程気軽になった。完成した暁にはもっと時間短縮が見込めそう。


「レイナ様はきっと今頃幸せ一杯なのでしょうね」


私がそう言うと、マイア様はケーキを口にした後に答える。


「そうでもないみたいですわよ?レイナ様は一途にアインス様を思っているけれど、アインス様はレイナ様程では無いかも?だって手紙が来ましたもの。アインス様から私に」


そうなの!?


私には来ていないけれど、何があったのかしら。


「アインス様の手紙にはなんて書いてあったのかしら?私に手紙は領地に帰ってから1枚も来ていないわ」


私はマイア様の来た手紙が気になり聞いてみた。


「カーナ様、多分カーナ様のお父様にお手紙が送られているのだと思いますわ。私達が王都から去った後の話が手紙で送られてきますもの」


「えぇっ、私、全く何も知らされていませんわ!」


マイア様は私にヨシヨシしながら話をしてくれた。


どうやら私が去った後、アインス様に使われていたのは媚薬の一種だと判明したらしい。


香にしたり、食品に混ぜ込んで操ろうとしていたとか。アインス様は毒の耐性を付けていたからすぐに効果が切れていたらしいけれど、弱い者は今だに心を蝕んでいるらしい。


アインス様の側近や同じクラスの令息、騎士達数十名になるほどの数に薬の影響が及び、配置換え等に時間が掛かったとか。


恐ろしいな綿菓子頭。


綿菓子頭が私達に使った毒が判明したみたい。やはり体内に残りにくい毒だったようだ。どちらかを殺して一方を罪人に仕立て上げる計画だったのだとか。


 そしてとても残念な事に毒物の名前が判明した事で医者を使って私達が領地に逃げた事も芋づる式に陛下とアインス王太子だけにはバレたらしい。


あーぁ。


けれど、療養と称して王城を去った事は結果として良かったのだとか。薬の影響を受けた騎士が私達を再度襲撃しようと計画していたらしい。


恐ろしいわ。まぁ実際、毒の影響で子どもが出来にくくなるのかは不透明なので陛下から怒られずに済んでるっぽい。レイナ様という正妃もゲット出来たしね。


「正妃も迎えられた事ですし、離縁もそろそろですわね。マイア様は良い人はいますの?」


「レイナ様には頑張ってもらわないと私達の離縁も無くなりそうなのよね。私は今世も仕事に生きそうな気がするわ。父も兄も私の働きを見て、もう何も言いませんもの。でも私は離縁出来たとしてもカーナ様は無理ではないかしら?熱烈なアプローチを受けているのではなくて?」


マイア様は悪戯っぽく私を見ている。


「アインス様は格好いいとは、思いますわ。私が王城を去る前に残って欲しいと言われました。私に心を傾けていたのでしょうね。でもこの1年連絡一つ私には無いですし。


んー、それにほらっ、私達前世を足すと60近いのですよ?酸いも甘いも噛み分けてきましたもの。ね?もう人の恋を見ている方が良いのですわ。レイナ様の子どもを祖母気分で見る事ができたら良い位ですわ。」


「ふふっ。確かにそうですわね。でも気をつけていないと知らぬ間に外堀を埋められているかもしれませんわ。アインス様は優秀で抜け目が無いですからね。


それに私達の領地が他から注目され始めておりますのよ?王家が私達を手放すかどうか。そこも考えものですわね。」



私は今日も何だかんだとお茶を楽しんで邸に帰った。

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