第18話

 アインスが療養して1年近く過ぎた頃、すっかり元に戻ったアインスは真剣な顔で私に話しかけてきた。


「カーナ、大切な話をしても良いかな」


私はアインスを見て微笑む。


「どうしたの?改まって」


「お義父上と何度も話をしていたんだが俺は、城に帰ろうと思う。カーナも付いてきて欲しい」


「良いですわ。もちろん、ハルトも一緒ですわよね?」


「あぁ。一緒さ。以前と同じように侯爵家には国から優秀な文官を付ける事になった。それにハルトか、これから誕生する兄弟のどちらかが侯爵家を継ぐ事になっている。お義父上はとても喜んでいた」


 アインスは私のお腹を一撫でする。この事は陛下にも既に話しており、とても喜んでいるそうな。


ハルトは現在私の父である侯爵家の養子として籍を入れている。


私がこの侯爵家の跡取りとして希望したのと、レイナ様が『側妃の子は認めない』と陛下や大臣達に公言していた事でハルトに危害を加えられる恐れがあったため、父の子として養子縁組をした経緯がある。


陛下はハルトの存在を知り素直に喜んでいたらしい。ハルトの養子になった経緯を知ると、すぐに養子縁組を取り消して王子としての継承権を持たせて選択肢を増やしてやりたいと希望していたようだ。


父と離れるのは寂しいけれど、最近は王都から領地まで特急便を使えば1日掛からずに着くので以前より気軽に帰れるようになったため寂しさは半分程になっている。


 問題はレイナ様の子供達だろう。レイナ様は子を産んでから一度も会わずに過ごしていたようだ。まだ幼いとはいえ、母に会えないのは辛いだろう。けれど、私が彼等の母親になれるのだろうか。


必死に考えてみたけれど、無理ではないかと思うし不安になる。


だけれど、それを理解した上で私に出来る範囲で平等に、彼等が育つようにはしていきたいわ。ハルトが4歳、レイナ様の息子は3歳と1歳。私のお腹の中には第二子。


城は一気に賑やかになるのでしょうね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る