第10話
「カーナ様、今月末にアインス王太子殿下が視察に見えられるそうよ」
恒例となった毎月のマイア様とのお茶会。相変わらず私とマイア様の仲は良い。マイア様の侍女が淹れるお茶が美味しくてついお菓子と共に話が弾んでしまうわ。
今回の視察でアインス様達は王都からフォレスト公爵領、ライン侯爵領を視察して王都へと戻る予定らしい。
完成したばかりの馬車鉄道に乗っての視察なのだとか。アインス様が私とマイア様に会うのは1年半ぶりかしら。
「あら、視察だなんて珍しい。レイナ様とご一緒に来られるのかしら?どおりで最近お父様やセルゲイが忙しくしていたのね。」
マイア様がニコニコとお茶を飲んでいたが、私の話を聞いてブッとお茶を吹きこぼしたわ。珍しい。
「まさかっ!アインス様と技術部門の文官達だけで視察に来る事になっていますわ。我が家で1泊、カーナ様のお宅で2泊するそうですわよ。相変わらず侯爵様はカーナ様を大事にしておりますのね。
そしてこの視察で私は念願の離縁になると思いますわ。離縁の代わりとして私の知識、技術の提供になっておりますもの。自由を手にする時が来たのです。兄の嫁の中には既に子どもがいますし、跡取りの心配も無い。小姑がいつまでも邸に入り浸るのはねぇ?
そろそろ別邸に住まいを移して領地内外を飛び回ろうと考えていますの。」
マイア様は未来に向けて輝いた目をしているわ。
「そうなのですね。相変わらず私には城の話は全く流れて来ないのですわね。マイア様の夢応援しますわ!私は跡取りとしてこのまま侯爵家で領地改革を続けますわ。マイア様の新居に遊びに行っても宜しくて?」
「もちろんよ!是非来て頂戴。こちらから招待するわ。そういえば、アインス様からの手紙でカーナ様を王城に連れ帰る事を説得して欲しいとあったわ。よほどレイナ様と上手くいっていないか、カーナ様を忘れられない程思われているのか。貴方はどう思っているの?」
「えぇ!?びっくりなんだけど!?あっ、驚きすぎて地が出てしまったわ。」
マイア様はクスクスと笑っている。
「アインス様とは1年半以上会っていないし、手紙も贈り物一つ無いですし、今更感が凄いですわ。あぁ、でも父にはアインス様の事をどう思うのか等は聞かれますわね。父とは連絡を取っているらしいですの。
まぁ、私は侯爵家を継ぐ予定ですから王城には戻るつもりは無いですわ。王城に戻った所でレイナ様の邪魔にしかならなくてよ?正直な所、私は離縁でもこのままでもどっちでも良いですわ。領地改革には関係無いですからね」
「相変わらず興味のない事には無頓着ね。まぁ、そこが可愛いのだけれど。アインス様は貴方の愛を求めているらしいわ。王城内でナリスタの事件以降働きっぱなしだと聞くし、たまの休日はレイナ様に付き合っているのだとか。公爵家では技術者の派遣や育成についての会議をした後、侯爵家でのんびりする予定らしいから偶には夫をもてなしてあげないと、ね?」
忙しくしているのかぁ。大変ね。
「マッサージの一つでもした方が良いのかしら?美味しいワインを用意しておいた方が良いかしら」
ニマニマしているマイア様に気付かないままお茶会は終了。私は疲れたアインス様をもてなす事を考えながら邸へ戻る。
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