第13話
殿下の視察から4ヶ月ほど経ったある日、侯爵家の中庭でいつものようにマイア様とお茶をしているとふと、マイア様が口にする。
「カーナ様、最近お茶の好みが変わりましたの?」
「ええ、最近何となく怠さが続いて疲れやすいのです。お茶も香りの強い物が苦手になっていて。」
「もしや、お子が出来たのではなくて?」
その言葉に目を見開く。まさか。いや、4ヶ月前の記憶はある。出来ていてもおかしくはないわ。
私が動揺していると、マイア様はマリアナに医者の手配をするように指示する。侯爵家に在中している医者が来るのを待っている間にマイア様は話をする。
「そういえば、私ようやく離縁する事となりましたの。やっと自由になれた!!と、とても喜んだは良いのですが、何処から嗅ぎつけたのか釣書が届くようになりましたの。
げんなりよ!でもね、私にも良い人が出来たの。釣書も送ってくれてた!向こうは私の1つ上で伯爵位。貿易をしている領地なのよ!イケメンで優しいし、これは嫁に行かなきゃだめっしょ!おっと、興奮のあまりに言葉が戻ったわ。公爵領から3つ離れた領地ですわ。」
「ついに、マイア様に想い人が出来たのですね。おめでとう!恒例のお茶会が無くなるのは寂しいけれど、応援しているわ!絶対手紙を送って!」
自分の事のように嬉しくなるわ。
マリアナは医者を連れて来てくれたので私はそのままサロンの隣の客室で診察を受ける。
結果をマイア様と共に聞きたくてマイア様を客室に呼んだ。マイア様は部屋に入ってから私の手を握り、耳を澄ます。
「おめでとうございます。妊娠4ヶ月目程です」
「あぁ、嬉しいわ!でも、お医者様。この事は父とセルゲイ、ローランのみに伝えて下さい。後は内密にしたいのです」
その言葉にマイア様がハッとする。
「そうね。まだ黙っている方がいいですわね」
「分かりました。では私は旦那様にご報告後、部屋へ帰らせて頂きます」
一礼をして医者は部屋を後にした。
「皐月っちおめでとう!!私、もうお婆ちゃん気分だわ。毛糸の腹巻き用意したげる!」
「もう、京香ちゃん。私は結婚祝いに無加水鍋送ったげる!」
ふふっ。2人とも仲良く笑い合う。次会う時は式場で!と言葉を残して今日のお茶会は解散となった。
その夜はやはりお父様に呼ばれたわ。
「カーナ、医者から聞いた。おめでとう」
どことなく父も嬉しそうだ。
「お父様。その事なのですが、どうか王家に内密でお願いしたいのです。」
「レイナ妃の事か?」
「ええ。それも有りますが、これは私の我儘ですわ。この子をこの侯爵家の跡取りにしたいのです。私が産んだ後、お父様に養子縁組して欲しいのです」
「私としては願ったり叶ったりだが、本当にそれで良いのか?」
お父様もセルゲイも心配そうにしています。
「ええ。これ以上、王家のお家騒動に巻き込まれたくありませんわ。我が子には幸せになって欲しいのです」
「分かった。なるべく子が産まれるまではローランとタンザに動いて貰うとしよう。カーナはゆっくり休むように」
ーーーーーーーーーーーー
基本的にカーナはおっとりさんなので気付くのが遅くなったようです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます