第12話 ※

少しRが入りますのでご注意下さい。


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「カーナ様、先程アインス様の従者から王都で今流行っているお茶を頂きました。お飲みになりますか?」


「今はどんなお茶が流行っているのかしら。試してみたいわ、淹れて頂戴。」


そう言ってマリアナにお茶を淹れて貰う。


ーコンコンー


こんな夜に誰かしら?


「どなた?」


扉を開けるとそこにはアインス様が1人立っていた。

「良かった。まだ寝ていなかったんだね」


「アインス様、どうなさったの?すみません、このような格好で。今、ちょうどお茶を飲もうとしていましたの。一緒にいかがですか?」


私はアインス様を部屋に入れ、ソファへ座るように促す。


「今、ちょうどアインス様の従者から頂いたお茶を飲むところでしたの。アインス様は明日からの視察はどうされる予定ですか?」


マリアナはお茶を淹れると頭を下げスッと部屋を出て行った。


私はアインス様の向かいに座ろうとした時、不意に手を引かれアインス様の横にポスっと座る形になった。


「アインス、様?」


私は大きな腕に抱かれ動けないでいるとアインス様はそのまま私に話をする。


「カーナ、会いたかった。この1年半よく働いた。疲れたよ。今、途轍もなくカーナが必要だ」


「ふふっ。今なら甘えても良いですわ」


私はそう言うとアインス様に膝枕をしてアインス様の髪を撫でる。アインス様も文句を言わず膝枕をされているわ。


「アインス様は休まず働いていると聞きましたわ。大丈夫ですか?休みの日はレイナ妃とお出掛けすると伺っていますわ。身体が悲鳴を上げていそうですね」


「だからこうして休みを取りに来たんだ。私はナリスタの事で王太子の価値を大きく下げてしまったからな。


私は国王にはなれずとも子どもが国王となるだろう。種馬として働けばお役御免だ」


「ふふ。アインス様はレイナ妃に慕われ求められているではありませんか。仲睦まじく羨ましい限りですわ。でも、あまり根を詰めないで下さいね。


一応、私の夫でもあるのですから」


私はアインス様の頭を撫でながらアイサの淹れてくれたお茶を飲む。


「今、王都ではこのようなお茶が流行っているのですね。不思議な味わいですわ」


アインス様はお茶には目もくれず私の膝を撫でている。


「明日からの2日間は文官達に視察を任せる事になっている。君の父上にも話を通してあるから心配はしなくていい。私はカーナと2人で過ごしてたい。カーナとゆっくり休む」


「分かりましたわ。ゆっくり2人で過ごしましょう」


私は気にする事なくアインス様の頭を撫でながらマイア様とのお茶会の話や料理の話をする。アインス様は気持ち良さそうにしながら持て余した手を私の膝に乗せて撫でている。


暫くして私はふと、指先がピリッとした事に驚き『あっ』と声が漏れる。


アインス様はその声に反応し、先程まで膝を撫でていた手がピタリと止まる。アインス様は私に視線を向けたと思うとムクッと起き上がり、私の唇を奪う。


「はあっ、はぁ。待っ、て」


アインス様はギュッと私を抱きしめている。


何か、おかしいわ。少し身体が火照る感じがする。息が荒くなっている私を見て、アインス様は可愛いとキスを落とす。


「君にはこうでもしないと私との距離を取るだろう?私はカーナが居ないこの1年半苦しかった。どんどん深い闇に堕ちていくのがわかるんだ。


私の意思で、初めて身体を重ねる相手はカーナと決めていた。愛している。叶うなら全てを投げ打ってずっと君の側にいたい。」


私は手でアインス様の胸板をそっと押し、身体を離そうとするがびくともしない。


「い、いけません、わ。私は、離縁っ、する身、ですのよ」


ドクドクと早鐘を打つように心臓が鳴っている。アインス様は私を軽々と抱き上げベッドへ運ぶ。


「カーナ、私は君を離せない。愛している。離縁はしない。だから、君の初めてを私が貰う」


そう言い終わると何処から取り出したのか、私の左の薬指に指輪をはめた。同時に熱く深い口付けをし、身体を重ねる。何度も何度も。お互い深く繋がり溶け合う。溶け合った身体は2人の境界線を無くしていくほどに。


私達は部屋を出る事なく2日間を過ごしていった。


「カーナ、愛している」


「嬉しいですわ、アインス様。城に帰ったらレイナ様を大切にしてあげて下さいませ。無理しませんように。お体に気をつけて下さいませ」


アインス様は私を抱きしめた後、文官達と馬車鉄道に乗り込み帰宅の途につく。


「カーナ、あれで良かったのか?」


「ええ。お父様。正妃様の邪魔はしてはいけませんわ。私は側妃です。私が出しゃばっては今度こそ彼女は自害してしまいますわ」


私はそう言って邸に戻る。



これでアインス様との夫婦関係も終わりを迎えるのだとこの時は思っていた。

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