この村には、長らく伝わる不思議な因習がある。
――和ホラー好きさんなら、この一文だけで胸がときめくでしょう。
しかし、その因習を破ってしまったら……?――ドキドキが止まりませんね!いけないことだとわかっていても、心が期待に躍り散らかしますよね!
今作では、しっかりと期待に応えてくれます。
そう、ただ守っているだけではわからないのです。破ったからこそ、この因習に隠された秘密を知ることができるのです。
このお話はその点も秀逸。
ホラーとしても最高に素晴らしいのですが、謎に迫るミステリーとしても読み応えある作品となっています。
ストーリーは陰惨な描写も多く、心抉られる場面も多いですが、共に描かれる恋愛模様が張り詰めた気持ちを優しく和らげてくれます。
ヒロインの志摩は、心優しすぎるあまり痛みを吐き出せずにいる……けれど少し天然ちゃんでいざという時は向こう見ずに突っ走るところが可愛い。
一緒に行動する奏斗は、お調子者っぽいようででもしっかりしてて頼りになるカッコイイ男子……なのにここでこの台詞を言うか!と突っ込みたくなるムードクラッシャー。(褒めてます)
こんな子がいたら自分も恋するわ、てか不穏の元凶となるモノも惚れるんじゃなかろうな……?と不安になるほど、二人揃って魅力的です。
ホラーはとことん恐ろしく、ミステリーはパズルを組み立てるように面白く奥深く、そして恋愛は可愛くて甘くて優しいときめきに満たされる。
一作で三度美味しい作品です!!
山深い村。といっても、そこには電気もあるし、水道ある。スマホだって使える。急病人がいれば、ヘリだって飛んでくる。
でも、ただひとつ。
そこには、他の村にはない、ちょっとかわった因習があったのだ。
四年に一度、村に伝わる厨子を祭り、その厨子をつぎの家に渡す……。
帰省していた志摩は、入院している祖母のかわりに、このちょっと変わった祝宴を取り仕切る。
「厨子の祝宴」。
それはつつがなく終了するのだが、つぎの当番家が厨子の受け入れをことわってきた。
「もうこんなこと、やめないか」
そして、その夜から、怪異が始まるのだった。
村に残る因習。それには村の暗い過去と怨念が絡んでいた。そして、その過去も怨念も、いまだ消えてはいない。そう、決して消えてしまうものではないのだ。
時がたち、加害者が忘れたとしても、罪も罰も消えてなくなったりはしないのである。
村に受け継がれる怨念と因習。志摩は幼馴染の奏斗とともに、怪異を止めるために動き出す。
そして、知るのだ。この村にまつわる忌まわしくも恐ろしい過去を。
だが、村に伝わるのは、怨念と暗い過去ばかりでは決してなかった。
果たして彼らはその謎を解き、根深き怨念の連鎖を解くことができるのか?
これはホラーだが、本作では恐怖は少し自重されています。恐怖と恋愛と社会問題。それらがほどよくバランス調整された深い物語になっています。
怖いのが苦手な人でも安心して読める。
が、夜に読むことは勧めない。
特に、風の強い夜は……。
村に伝わる風習は、今は因習となり重く村の六家にのしかかります。次の当番家は因習の負担減を提案、現当番家戸主の代理である主人公が返答を保留することにより呪い(まじない)が解け、村に厄災がふりかかる、そんなお話、がっつりホラーです。苦手な方はご注意を。
その風習の因縁ですが…男の私(ここで性差を持ち出すのもどうかとは思いますが…)から見ても胸クソ悪く話でして…呪いを施した僧侶の清澄さんには激しく同意します。それにこの因縁は未だに村の下衆共に脈々と継がれているのがまた胸クソ悪いんです。もうあれですね、本当に因果応報、自業自得です。こんなに"責任を取る"と言う言葉に唾棄したくなることなんてそうそうないです。
このお話はフィクションだと思うのですが、この因縁には現実味があります。このような祟りは日本中、どこにでもありえると思います。
そして、形は違っても現代日本に於いてもまだまだ無くならないのが現実です。現に日本は未だに人身売買大国、特に子供に関してそう呼ばれているのですから。
繰り返しますが、このお話はがっつりホラーです。ですが、怪奇だけではない怖さ、闇を知ることのできるお話です。
もう手遅れな自称大人ではなく、これからの世を担う若い人達にぜひ読んていただきたいお話です。
レビュウを読んだのが間違いでした。皆さんの感想に引き込まれて読み始めたら
一気に物語に絡められて息つく間もなく最後まで読んでましたよ。
武州様の作品、実は初めてでしたが(すいません、怖い系は寝れなくなるので)
話の展開が小気味よく怖さ来たあ~となるとするっと主人公2人の兼ね合いに話が移るので恐怖心がすぐに薄れていきそこから先の展開をワクワクしながら
読み続けているという、何だかなぁ催眠術にでもかかったのかも。
とにかく怖さも十分で村に纏わる歴史が悲しかったけどお互いを意識しこれから2人が共に人生を生きていく展開に温かくてさわやかさな読後感を受けてホラーという分野に立ち寄ってもいいかなと意識が変わりそうです。
とにかく面白かったです、他の作品も覗いてみますね。どうもありがとう!!
誰にでも、忘れがたい苦しみがある。
これからを生きる足取りが、重く沈んでしまうほどの。
閉ざされた過去の罪業が黯く渦巻く村。
そこには、謎めいた厨子が祀られている。
村全体で大切にされているものの、それは四年ごとに六つある本家筋である当番家を定められた順番で廻されており、その時期ごとに祝宴を催して飲めや歌えや大いに食らえの祭事を揃って行う。一見、祝宴がメインのようですが……。
中を見てはならないとされている厨子。
村の境に配置された当番家。
岩を標とした合祀塚。
唯一の女系の家、七塚。
因襲を繋ぐ家。忘れた家。放棄しようとしている家。守り続けている家。何も考えずに諾々と参加する家。恐れ慄くだけの家。
そして。
その犠牲者が……。
続けられてきた儀式を途絶えさせたとき。
恐ろしい、〝禍事〟が起こる。
七塚家の次期当主・志摩と、その従兄・奏斗は、怨嗟渦巻く怨念に共に立ち向かう!
──と、書くと、めちゃくそコワいんですけど。
志摩りんと奏斗っちったら、ねぇ。
いちいち、しばしば、ちょいちょいと、イチャイチャしだすんですよ? もう。
最初は互いに無自覚なんですけど。
読者たちは、このじれじれラブい同棲ちっくな日々の諸々に一喜一憂ですよ。コメント欄がピンクとピンクとグレーのマーブルですもん。
下着風呂だの、エア旦那だの、理性チャレンジ2021だの、まぁあーサロンの精鋭メンバー様方が放つパワーワードが逐一炸裂しております。そうです。コメント欄、要チェックです。カクヨムが誇る綺羅星のような才能が集まっています。
なので。
最初から最後までホラー&ラヴコメディなのです。
それでいて。
人間が人間と生きていくこととは。
人を愛するという言い分は執着を正当化することではない。
そういった、深い教えも根を張っている良作です。
全38話。
長いようで、あっという間でした。完結済みですので、「待つのツラいの」派の方は今こそ、どうぞ‼︎
あ、そうだ。ここでするのも一寸よろしくないかもしれないなと思えなくもないことなんですけど、青嵐先生。
ひとりだけ自業自得懲罰もれしてる1名に対して志摩りんを愛でる会の会員としては許しがたいと妄想を拗らせている身としては。
短編で描いていただいて「ざまぁー‼︎」を体感したいと欲深な望みを抱いておりますと乞うしかないのであります。
是非、これまでの作品で感じたカタルシスを、こちらでも味わいとうございます。
以前、別作品で近況ノートのSSから番外編にまでなった前例に味をしめてしまっておりますことを申し添えまして、伏してお詫びしつつも、お願い申し上げるものであります。あれ、これレビューだよね。うん、レビューのつもりなんですけどダメですか。結構、同じことを望んでおられる読者さま方がおられると思うのですけどダメですかね、えぐえぐ。
いやもう、ほんと、読んで!
コワい話は苦手って方こそ大丈夫だから読んで!
田舎の祖母の家で『厨子の祝宴』を無事終わらせた場面から物語は始まります。
もうね。冒頭から厨子の存在感がバンバンなんです。ゴオオオオオと背後に物騒な効果音が見えるようです。そしてやっぱり厨子が夜中に……!!!
ホラーな本作ですが恋愛要素も堪能できる、きゅんとギャーとひぇええええが絡み合う作品。しかも厨子にまつわる過去が次第に解き明かされていくミステリ要素もあったりして。とにかく始まりから終わりまで、ずっと勢いがあり面白いです。
怪異を起こす敵のような存在だった厨子も、真相に近づくにつれて、そのイメージは変化していきます。本当に恐ろしいのは……。
あってはならないことですが、しかし残念なことに本作に描かれているような出来事は空想だとは切り捨てられない現実性も含んでいます。それは過去に、ではなく、今も、かもしれません。
浄化されるようなラストの清々しさも魅力の作品。
完結済ですので一気読みもおすすめです。
と私は思ってます。
ていうか、相性がすごく良い。
何でこんなことするんだろう?って子ども達が思うような儀式やら何やらには、実は身の毛もよだつような過去があって……なんて。
そして本作ももちろん。
ただただ、厨子を数年ごとに回すだけ。
回された家はそれを大事に預かって、それでまた数年後に次の家へ。
えっ、別に回さなくても良くない?
こういうことを言い出す人、絶対出て来るんですよ。金もかかるしさ、もう年寄りしかいなんだし、大変でしょ、って。
そんなことしたらどうなるか。
ええ、とんでもないことが起こります。
内容については本作をじっくり読んでいただいてですね、ええ。
この作者様のホラー描写は、何かじっとりとした湿度を感じるんですよ。空気がじっとり重くなる感じ。明るいところで読んでいるはずなのに、何だか暗く重く感じるほど。
けれどもそこにほんのり差し込むラブ……仏か……?
これがあるからやめられないんですね。
ホラー?怖いしなぁ?と思う方、まずはこっそりコメント欄をチェックしてみましょう。怖い怖いと言いつつも、別の話題でもきゃあきゃあ盛り上がっていることに気付くはずです。
これだから青嵐さんのホラーはたまらないんですよ。
みなさんは、厨子というものを知っていますか? 仏像や位牌などを中に入れる仏具の一種です。
本作の大きな特徴のひとつに、舞台となる村の特異性が挙げられます。
そのうちひとつが、主人公志摩の実家を含めた六つの家でひとつの厨子を管理し、四年毎に次の家へと回していくというものです。
なのにひとつの家が、もうこんなのはやめにしないかと言ったことから村では不吉なことが起こり始めるのですが、村の特徴はそれだけではありません。
本家に分家、女性に対する感覚など、所々に前時代的ではとないかと思うような価値観が見受けられ、時には眉をひそめるような展開だってありました。
しかし現実でも、令和の時代になった現代でも、そういう価値観は、古い風習と同じく、そう簡単にはなくなったりしないのですよね。
迫り来る怪異に、村特有の閉塞感、漂う古い価値観。これらを聞けば、苦しいシーンの連続と思うかもしれません。しかし、そんな中でも清涼剤となりうるものはちゃんと存在します。それが、作品のタグにもちゃーんと書いてある、恋愛描写です。
志摩の親戚であり幼馴染でもある奏斗。彼もまた志摩と共に怪異に巻き込まれていくのですが、志摩が怖がるたびに、あるいは過去に起こった出来事に苦しむたびに、奏斗がそれを支えようとしてくれます。他にも、幼馴染の気安さからか、志摩の無防備な言動により、奏斗の理性が試されたり、奏斗の理性が試されたり、奏斗の理性が試されたりするのですが、その時ばかりは怪異よりも、二人の関係と奏斗のメンタルに注目せずにはいられません。
村を襲う怪異と、二人の恋。それぞれどんな決着をむかえるのでしょう。
都会から離れた山奥にある、小さな村。そこにはある風習があった。
それは四年に一度、村に伝わる厨子を移動させるというもの。厨子は四年ごとに六家と呼ばれる家を回り、大切に保管されてきた。
こういう不思議な風習って、田舎に行けば結構残っていますよね。
この行事のために村を訪れたのが、主人公の志摩。
教師をやっていたけど現在休職中の彼女は、母の実家であるこの村で、親戚の奏斗と一緒に行事を進めていたのですが。村の一人がこんなことを言い出したのです。
色々と面倒だから、もう厨子を移動させるのは止めにしないか、と。
確かに面倒なのはわかります。けど何百年も続く風習を、そんな簡単に止めちゃって良いの?
しかし志摩や奏斗が反対するも、とりあえず厨子は移動させずに置いておくことに。
しかしその日以来、村では奇妙な事件が立て続けに起こるようになるのです。
だ~か~ら~! 昔からの風習を勝手にストップしちゃダメでしょうが!
志摩の周りでも奇妙な現象、恐ろしい出来事が起き、もうビクビクしながら過ごさなければなりません。
しかし幸いだったのが、彼女の側には奏斗がいたこと。どんなに怖い目にあっても、近くで支え、励ましてくれる人がいるって素敵ですよね。
怖いだけでなくこの二人の関係も、本作の大きな見所。親戚故に距離が近いですけど、何だか良い関係の志摩と奏斗から、目が離せません。
ただ、ね。この志摩ちゃん、実は少し天然な所がありまして。奏斗を動揺させちゃうような、誘っているようにしか思えない際どい言動を、度々しちゃうのですよ。
本人にしてみれば親戚ならではの距離の近さがあるからこそ、奏斗を異性として意識していないからこそ取れる態度なのですけど。奏斗の理性がガタガタになりそうな事言い過ぎ! これじゃあいつか襲われたって文句言えませんよ! 奏斗泣いてるよ!
だけどそんな近い二人の距離感は、やっぱり好きです!
田舎で起こる、恐怖あり、ラブありの怪事件の、結末やいかに!?
山近い集落で四年に一度行われる『厨子の祝宴』。
入院中の祖母と、村を出た母に代わって、幼なじみの奏斗とともに祝宴を執り行った志摩。
祝宴は無事に終わったものの、次に厨子を預かる家が異を唱えたため、厨子はそのまま志摩の手元に残ることに……。
その夜から、異変に見舞われる志摩と奏斗。
さらには、村にも異変が起こり……。
現在でも昔から続く風習が色濃く残った村を舞台にしたホラー作品です。
ですが、恋愛描写も入っているため、ホラーがあまり得意でない方も楽しめると思います(*´▽`*)
厨子に封じられていたのは何なのか。そして村に隠されたものは……。
二重の意味でどきどきハラハラする恋愛ホラーをどうぞ堪能してください!(≧▽≦)