手順通りに執り行わないと、恐ろしいことが起こる……


 山深い村。といっても、そこには電気もあるし、水道ある。スマホだって使える。急病人がいれば、ヘリだって飛んでくる。
 でも、ただひとつ。
 そこには、他の村にはない、ちょっとかわった因習があったのだ。

 四年に一度、村に伝わる厨子を祭り、その厨子をつぎの家に渡す……。


 帰省していた志摩は、入院している祖母のかわりに、このちょっと変わった祝宴を取り仕切る。
「厨子の祝宴」。
 それはつつがなく終了するのだが、つぎの当番家が厨子の受け入れをことわってきた。

「もうこんなこと、やめないか」
 そして、その夜から、怪異が始まるのだった。


 村に残る因習。それには村の暗い過去と怨念が絡んでいた。そして、その過去も怨念も、いまだ消えてはいない。そう、決して消えてしまうものではないのだ。
 時がたち、加害者が忘れたとしても、罪も罰も消えてなくなったりはしないのである。

 村に受け継がれる怨念と因習。志摩は幼馴染の奏斗とともに、怪異を止めるために動き出す。
 そして、知るのだ。この村にまつわる忌まわしくも恐ろしい過去を。


 だが、村に伝わるのは、怨念と暗い過去ばかりでは決してなかった。
 果たして彼らはその謎を解き、根深き怨念の連鎖を解くことができるのか?


 これはホラーだが、本作では恐怖は少し自重されています。恐怖と恋愛と社会問題。それらがほどよくバランス調整された深い物語になっています。
 怖いのが苦手な人でも安心して読める。

 が、夜に読むことは勧めない。
 特に、風の強い夜は……。

その他のおすすめレビュー

雲江斬太さんの他のおすすめレビュー438