アニメ化するのなら私はピンク髪がいい

第44話 アニメ化しても勉強会でかしこキャラが全力を出して教師役をする展開はご遠慮いただきたい

「アニメ化しても勉強会でかしこキャラが全力を出して教師役をする展開はご遠慮いただきたい」

　レゴはテーブルに突（つ）っ伏（ぷ）して、大きなため息を吐いてから、オンスに向けて、漏（も）れるような声を出した。

「疲れたぁ」

「あーしの方が疲れたって」

「いや、絶対に私の方が疲れているでしょ。バカ二人の相手してたんだよ。もう、へとへとだよ」

「あ、躊躇（ためら）いなくバカっていいやがったな」

「もう言わせてよ。あんたらはいいよ、やりたくないって文句言ってればいいんだもん。それをやる気にさせようとする身にもなってよ」

「やる気にさせようとしていたのか？　罵倒（ばとう）された記憶しかないんだが」

「そんなこと覚えている暇（ひま）があるんなら、英単語を一つでも覚えておいてよ」

「いやぁ、それにしても、久しぶりにこんなに勉強したわ。あーし、こんなにまじめに勉強したの、前の期末の追試以来かも」

「おまえ、毎回やってんのかよ」

「前は、ホリーに教えてもらったな」

「それで今回、絶対来たくないって言ってたのか」

「めっちゃキレてたな。正直、レゴの比じゃなく。あれは、あーしでも怖かった」

「ホリーをそこまでキレさせるなんて、いったい何をしたんだよ。いや、想像つくけど」

「まぁ、あーしも、さすがに懲（こ）りたよ。次からは追試にならないように勉強する」

「言ったな？　次、追試だったらグーパンだからな。グーパンの上に、でこに、てかりでこって書くからな」

「それ、マジでやめろって」

「私も、もう勘弁（かんべん）だよ。はぁ。本当は、今日、遊びに行くはずだったのに」

「ごめんて」

「オンスのスカート姿も拝（おが）めたのに」

「それも、マジでやめろ」

「ていうか、今日、スカートで来いって言っただろうが」

「スカートで勉強なんてできるかよ」

「おまえ、学校で何やってんだよ」

「学校は寝るところだろ？」

「おまえ、それかっこいいと思っているかもしんないけど、ぜんぜんだからな。とりあえず、次から授業はちゃんと聞け。そうしないとほんとに次も赤点オンパレードだから」

「……、そういえばなんだけどさ、今、思い出したんだけど、レゴ、しれっと自分のことをかしこキャラって言ってなかったか？」

「え？　言ったけど、それが何か？」

「ふーん」

「え？　何々？　私って、自他ともに認めるかしこキャラでしょ。少なくとも今この場では、自他ともに認めていただきたいんだけど、自他ともに」

「自他ともにって言いたいだけだろ。いや、別にかしこキャラでもいいんだけどさ、なんていうかさ」

「なんだよ。言いたいことがあるなら言ってみ。ただ、今の私は疲れているからバサッと行くよ。心して来いよ」

「いや、大したことじゃないんだけどさ。レゴみたいな、性格わるくて、皮肉っぽくて、うざくて、おもしろくなくて、うっとうしいくて、だからといって、さほど美人でもない、うざキャラは、バカだから許されるところあるじゃんか。それなのにかしこキャラってどうなのかなって思って」

「……おふっ。ちょっと、想定していた3倍くらい重いやつ来て、びっくりしてるんだけど、とりあえず、おまえ、今、一息に何個悪口言った？」

「数えてやろうか？」

「数えなくていいよ！　いっぱいだよ！　あと、うざい2回言っているからね！　2回も言われるほどうざくはないよ！」

「いや、うざいだろ」

「うざいかもしれないけど、2回も言わなくていいじゃん！　2回も言わなくていいじゃん！」

「おぉ、2回言った」

「大事なことだからね！」

「そういうとこだよな」

「うざくないよ！」

「なんていうのかな。別にうざくてもいいんだけど、愛嬌（あいきょう）がないとさ。バカはまだかわいげがあるけど、かしこは、ちょっと愛せない」

「勉強してないバカの分際で、かしこをディスるんじゃーないよ。かしこはあんたがイビキかいて寝ている授業中にちゃんと勉強してんだよ。崇（あが）め奉（たてまつ）ることはあっても、ディスっていいことはないんだよ」

「そういう上から目線がむかつくんだよな。勉強してんのがそんなに偉（えら）いのかよ」

「偉いよ。今、この状況で、オンスが、追試に受かるように一生懸命勉強教えてあげている私は、どう考えても偉いでしょ。正直、そんなこと言われてがっかりだよ」

「いや、ごめんごめん。それはマジで感謝しているから。ほんと、確かに今のは、あーしが悪かった。今、レゴをディスる立場にないわ」

「今っていうか、たぶんこの先ずっとないと思うけど」

「だから、そういうとこだぞ。素直に感謝させろい」

「よし。感謝したまえ」

「あーがと」

「どーいたまして」

「へへ」

「ふふ」

「何だよ」

「別にぃ」

「なぁ、ところで、これは、どうでもよくないんだけどさ、さっきからエマがめちゃめちゃ静かなんだが」

「確かに。寝たのかな？　寝たら、ケツバットなんだけど、って、あ！　だめだ！　エマ、目回している！　ついにぶっ壊れた！」

「おい！　大丈夫かよ！　頭から湯気（ゆげ）出てるぞ！」

「水、水！　頭からぶっかけよう！　エマー！　もどってこーい！　あと数学のプリント3枚残っているぞ！」

「鬼か、おまえは！　エマ！　もう今日勉強はいいからな。落ち着け。そして、ゆっくり息を吐け。そして吸え。ひっひっふーだ」

「……」

「……」

「「エマー！」」