第23話 アニメ化するなら天才キャラにしてほしい②~陰キャとチェーン~

「アニメ化するなら、天才キャラにしてほしいんだった」



 モンブランの栗クリームの部分をスプーンですくって、エマの口に運びつつ、レゴは思い出したように言った。



「みんな、そうじゃない? エマも天才がいい」


「まぁ、そりゃそうだよね」


「天才になって、テストで満点取りたい」


「あー、エマの天才ってのは、テストで満点取れる子なんだね」


「違うの?」


「いや、それも天才だと思う。勉強できるっていうね。マンガやアニメとかだと、学年一位のキャラとかは天才って表現されるし」


「エマはね、勉強しないでテストの点数をさらっと取れる子が天才だと思うな。ほら、学年一位でも、いんキャのガリ勉で、メガネしてて、肌が白くて、運動オンチで、朝から晩まで勉強しかしてません、みたいなかんじだと、天才って言いたくないじゃん」


「それは完全なだけど、確かに、そっちは秀才ってかんじがするよね」


「でしょ。天才は、ようキャで、かっこよくて、友達も多くて、スポーツもできて、普段、ぜんぜん勉強してないのに、テストは満点。これだよ」


「うん。天才うんぬんの前に、陰キャ差別がひどいね」


「え? だって、陰キャな時点で天才ではないよね?」


「エマの中では、陽キャであることは必須条件なんだね」


「だって、天才なんだよ? 天才なんだから、人生ハッピーライフじゃん。そうしたら、絶対に陽キャになるよね。エマ、何か変なこと言っている?」


「逆説的には言えば、だと」


「違うよ。のことを陰キャって言うんだよ」


「あ、定義なんだね」


「ちなみにエマは陽キャです」


「人生楽しんでいるもんね」


「でも、今はアンハッピーだから陰キャかも。テスト、嫌だー」


「言葉の使い方が一般とずれている気もするけど、それは置いておくとして、天才だから陽キャってのはどうだろう。見た目はどちらかというと陰キャだけど、天才ってのもいると思うけど?」


「あー、確かに。イケメンでノーベル賞取っている人って見たことないかも。みんな、難しいこと考えている顔しているもんね。うーん、あの人たちは天才だと思うけど、陽キャではないかなー。よし、例外としてノーベル賞とったら、陰キャでも天才と認めます」


「ノーベル賞受賞者に対してめちゃくちゃ失礼な上に、ほんと、何様なんだろうね」


「ほら、エマ、陽キャだから」


「陽キャは、そんなにえらいのか……」


「偉いのだよ。陽キャは陽キャのために生きているけど、陰キャはだからね」


「もはやファシストじゃん。何、その優生思想? 怖いんだけど?」


「別に差別じゃないよ。だって、陽キャと陰キャは生まれもっての素質じゃなくて、だもの。自分の人生をちゃんと楽しめている人が陽キャで、楽しめていない人が陰キャ。ね? 差別しているんじゃなくて、単純な事実として、陽キャの方がすぐれているんだよ」


「なるほど、そういう考えか」


「そう。陽キャが陰キャをしいたげているんじゃなくて、陰キャが勝手に虐げられにきているんだよ」


「うん、やっぱりすさまじいロジックだけど、そのロジックだと、見た目が陰キャでも、自分のために生きている人は陽キャなんじゃない? たとえば、趣味に生きている人とか、研究室から出て来ない科学者ナードとか、汗まみれのアイドルヲタクとか、引きこもりのヲタニートとか」


「……、まぁ、そうなっちゃうけど、エマ的には、ある程度見た目きれいで、社交性がないと陽キャと認めたくありません」


「わがままロジックだなー」


「姫ですから」


「ちなみにエマ姫の定義でいくと、私は何キャラなの?」


「え? うーん。どっちだろう?」


「え? 迷うの?」


「何だろう。ノリはいいし、友達も多いし、性格も明るくて、いかにも陽キャってかんじなんだけど、実際のところはファッションセンスゼロで服はエマがそろえてあげているし、持っている小物ださいし、ときどきすごい根暗なところ出るし、あれだよね、陽キャになろうと必死に足掻あがく陰キャみたいなかんじ?」


「それ、悪口だからね!? 前置きのめ言葉をぶっとばすくらい、後半、えげつない悪口言っているからね!? てか、小物ださい? マジで?」


「うん。金ぴかの龍の刺繍ししゅう入った財布とか、変な漢字ばっかりのタオルとか。あれどこで買うの? お寿司屋さん? 鞄についてるただのチェーンとかも意味わからない。そう。それ。それさ、じゃらじゃらうるさいんだけど」


「いや、違うの。あれはママと一緒に買いに行くと、あぁいうかんじのになっちゃうだけで、私はもっとかわいいのが好きっていうか。てか、チェーンはいいでしょ? これないと、というとき危ないじゃん」


「ちょっと、何言っているかわからないけど、とりあえず、そういうところだよね」


「えー、私、陰キャなのー。サイアクー」


「……レゴちゃんって、てのひら返しがすごいよね。そういうとこだよね」

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