第11話 アニメ化するならキャラを立てなきゃね⑤~本音と気遣い~

「アニメ化するなら、キャラを立てるべし!」



 スマホの画面にポップアップされた、レゴからのメッセージを見て、エマは首をかしげた。



「キャラを立てるって何?」


「お、ついにその話しちゃう?」


「しちゃうって、レゴちゃん、今日ずっと言ってたじゃん」


「いやいや、お約束だから」


「誰との?」


「お決まりの展開だって意味だよ。このレゴちゃんが何度も同じ話題を出しているのに、なかなか本題に入らないっていうね」


「え? エマ、そのお約束知らない」


「うん、昨日、ホリーとやっただけだから」


「ホリーちゃんが、その茶番ちゃばんに付き合ってくれたの?」


「茶番言うな」


「ホリーちゃんが、このに付き合ってくれたの?」


「エマ、もしかしなくてもバカにしてるよね?」


「エマが? そんなわけないじゃん。エマは友達のことをバカになんてしたりしないよ」


「だよね」


「ただ、レゴちゃんの思いついたこの遊びが、さほどおもしろくないって思っているだけだよ」


「辛辣が過ぎるよ!」


「読めない」


「しんらつ、だよ! 辛口からくちってことだよ!」


「じゃ、辛口って書けばいいのに。わざわざ難しい漢字を使うところとかも、レゴちゃんのおもしろくないところだよね」


「ガチの論評やーめーろーよ! 泣いちゃうぞ!」


「じゃ、”モヤモヤさ〇ぁ~ず”よりもおもしろい?」


「最強お笑い芸人と比べんなよー。あれよりおもしろいわけないじゃん。あれよりおもしろかったら、芸人デビューしてるよ。今頃、世紀の爆笑王になっているよ」


「いや、そこまではいかないんじゃ」


「いくよ! ”さま〇~ず”なめんなよ! てか、あんなトップランカーと比べるなよ。そこまでの話術を求められたら、誰も口を開けないよ!」


「じゃ、”ブラタ〇リ”よりおもしろい?」


「レジェンドと比べんなよー。比較対象がおかしいだろうがよー。そこよりおもしろかったら、私がぶらぶらしてるよ。”ブラレゴリ”だよ」


「”ブラレゴリ”って何?」


「レゴちゃんのなけなしのユーモアだよ!」


「ふーん。それって何がおもしろいの?」


「……それはコメディアンに絶対聞いちゃダメな質問だよ」


「はー、じゃ、誰と比べればいいの?」


「プロ以外とだよ! レゴちゃんは駆け出しのアマチュアコメディアンなんだよ!」


「じゃーね、誰がいいかな」


「突っ込めよ! アマチュアコメディアンって何だよ! レゴちゃんは、単なるおちゃめな女子高生でしょうが!」


「エマに突っ込みを求めないでよ。そういうのはエマのキャラじゃないし」


「いや、それはそうだけど。ん? 今、キャラって言った?」


「言ってない」


「言ったよね?」


「何のことかな?」


「言ったじゃん! てか、TLに書いてあるから! 遡れば見えちゃうから! てかてか、自分のキャラわかってんじゃんか!」


「えー、エマのキャラって何? ぜんぜんわかんない」


「そのしらこい天然おバカキャラだよ!」


「おバカ……、エマは、かわいい系キャラなんだけど!」


「かわいいのは外見だけでしょ!」


「え、それは、素直にうれしい。レゴちゃんだって、見た目はおちゃらけ系キャラだよ」


「ありがと。ってめられているのかわからないけれど、うれしいってことにしとく」


「エマ達、キャラ立ってるね!」


「いえーい! キャラ立ってるぅ!」


「そういえば、一度聞いてみたかったんだけど、レゴちゃんって、LI〇Eでもハイテンションじゃない。これってさ、文字打つときもハイテンションになって書いているの?」


「そんなわけなくない? どんだけハイテンションな文面であっても、書くときまでハイテンションなわけないでしょ? もしもそうだったら頭おかしいじゃん」


「あ、うん。だから、そうなのかどうか聞いているんだけど?」


「頭おかしくないから! もちろんだけど、実際には無の顔で、ハイテンションな笑いを提供しているから!」


「え!? そうなんだ。それ、今までのレゴちゃんの話の中でいちばんおもしろいかもww」


「あのさ、エマ。ちょっと電話しない? 私達、互いについてもっと話し合う必要があると思うの」


「ごめん、エマ、今からハーゲン〇ッツ食べるから、電話はできないの」


「どういう理由!? 食べながら話せばいいじゃん!」


「何言っているの? そんないい加減なことできないよ。アーモンドキャラメルクッキー味なんだよ?」


「だよ? って当たり前みたいに言われても。アイスのトッピングだよね? それが友達との電話よりも優先されるわけ?」


「いやいや、アーモンド、キャラメル、クッキーなんだよ? いわば、ビッグ3の競演なんだよ? アマチュアコメディアンが勝てるわけないよね? あとトッピングじゃなくてフレーバーだから! 間違えないで!」


「あ、え? うん、ごめん」


「わかればいいの。エマは、今から、アーモンドキャラメルクッキー味を味わわなくちゃいけないから、邪魔しないでね」


「ねぇ、エマ。それって、ただ単に私と話すのがめんどくさくなったわけじゃないよね?」


「え?」


「え?」


「……」


「わざわざ三点リーダを打つのはどういう意思表示なの!? そんなわかりきったことを聞くなってこと?」


「もう、レゴちゃん。そんなわけないじゃん。エマは、そんなせこいことをしたりしないよ」


「そ、そうだよね。エマはそんなことしないよね」


「うん。レゴちゃんがめんどくさいのはいつものことだし、本当に話すの嫌になったら、エマは普通にそう言うよ!」


「ごめん。そんなこと言われたら立ち直れない……。せめて! 言う前に、何かサインをちょうだい! 言いそう、って。レゴちゃんと話すの嫌って言いそうだなーって。あと少しで言っちゃうかもなーって」


「もうそれ言っちゃってると思うんだけど、レゴちゃんはそれでいいの?」


「大丈夫。その気遣い一つあれば笑顔になれるから。だって、私は天下無敵のアマチュアコメディアンだから」


「あ、自分で笑っちゃうんだ。さすがアマチュア」


「まぁね!」



 そこで、エマは、スマホを置いて、冷蔵庫からハー〇ンダッツのアーモンドキャラメルクッキー味を取り出し、お気にいりのプレートに盛りつけた。


 さぁ、食べようと思ってテーブルについたとき、スマホにメッセージがきていた。どうやらホリーである。



「あたしもハーゲンダッツ食べたい」



 そのメッセージを見てから、スプーンでアイスをくりぬき頬張って、うーんと口の中に広がる甘い香りを堪能たんのうした。それから、ふと、エマは素朴そぼくに思った。



 え? そこなの?

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